さくらびレポート92〜渡邉トシ子さん@七瀬まるごと美術館主宰

櫻ヶ岡中学校の中平です。

先週、地区懇談会へ行き、七瀬まるごと美術館を長年主宰してこられた、渡邉トシ子さんが今年1月に亡くなられていたことを初めてお聞きしました。

一昨年まで、私は七瀬商店街で行われた七瀬まるごと美術館に中学生と一緒に参加させていただき、地域の方々とのアートを通した交流という貴重な経験をさせていただきました。

長年、この企画をまとめ、地域の理解を得て、実行していたのが、渡邉トシ子さんでした。私が6年前に櫻ヶ岡中学校へ転勤してきた春、渡邉さんは来校され、私に「是非、七瀬まるごと美術館へ参加してください」と熱く語ってくださいました。その後4年間、関わらせていただきました。

情熱的な方が亡くなられたとお聞きし、残念な気持ちと、体調が悪いときなのに、無理をして私たちに貴重な場を与えてくださったことに、本当に感謝したいと思います。

右の写真は、一昨年の七瀬まるごと美術館に参加する最初の時、生徒全員でお観音様に集まり、渡邉さんのお話をお聞きしている場面です。

その時のお話もそうでしたが、いつも渡邉さんは、中学生に、次のような話をしてくださいました。

「私は戦争中に生まれて育ちました。戦争中は、言論の自由もなく、ましては表現の自由もありませんでした。だから、今、皆さんが、美術を通して自由に表現できることが基調なのです。」

渡邉さんは、晩年になってから、大学で学芸員の資格をとる勉強をされ、また、地域の子どもたちに美術の私塾を行い、表現の自由の大切さを伝えてくださいました。

今、学校現場の美術教師は、渡邉さんのように「歴史を繰り返さないための美術教育」「自由のための美術教育の大切さ」を実感して生徒に授業をしているでしょうか。表面的な表現の美しさや面白さに偏っていないでしょうか。

渡邉さんの言葉や姿は、いつも私に何かを伝えてきてくださいます。

渡邉さん、本当にありがとうございました。ゆっくりお休み下さい。
合掌