理想工場のまち「黒澤村」、蒲田電車区 秀の湯

蒲田には黒澤タイプライターの工場と従業員住宅があり、黒澤村と呼ばれていました。蒲田電車区の北側、新蒲田一丁目のあたりです。創業者の黒澤貞次郎氏が、理想的な田園環境の中に工場と従業員用住宅からなる新しいまち、ユートピアを作ったのがこの地でした。ハワードの田園都市構想、その後のイギリスのニュータウンの思想と通じるところがあるように感じられます。また、小学校や水道なども自前で設置しており、このあたりは芦屋の六麓荘とも共通点があります。
この南側には鉄道省の車庫がありました。蒲田電車区の開設は大正3年のことで(当時は電車庫)、黒澤村の着手とほぼ同時期です。蒲田電車区は20年4月15日空襲で被災し50両以上の電車を焼失しました。隣接する黒澤村も大きな被害を受けたのではないかと想像します。現在は黒澤タイプライターを引き継いだ企業の工場や集合住宅など新しい建物が建っています。田園の住宅をめざした黒澤村の面影はあまり残っていませんが、木造の塀のあたりにわずかに雰囲気が残っているのでしょうか。

秀の湯は蒲田駅からはかなり遠く15分はかかります。京急の雑色駅からも同じくらい。天然鉱泉ということです。建物は新しい和風建築で、とても広いです。脱衣場の天井は舟底型で高いです。浴室も伝統的な高い二段の天井で、それぞれ少しかまぼこ型になっています。浴槽は黒湯のほかバイブラとかジェットで、お湯はちょっとぬるめでしょうか。背景のペンキ絵は雄大な富士山と海が幅広く描かれています。ご主人はとても親切な方でいろんなお話を聞かせていただきました。銭湯はいろいろ応援してもらっているが、やはり経営者の健康がなにより大切だよということでした。
秀の湯 大田区新蒲田3-26-1 16:00〜24:00 5のつく日(日祝は翌日休) JR蒲田からバス新蒲田3丁目、またはJR蒲田駅から徒歩20分