玉の井の面影、隅田湯

押上駅で東京スカイツリーへ行く人がどっと降りて空いた東武伊勢崎線の急行電車、東向島駅へは次の曳舟で乗り換えです。東向島駅の少し北から斜めに伸びるいろは通り商店街、今は静かな通りで、永井荷風が描いたような歓楽街の面影を感じさせることはありませんが、一本裏の道をとるとけっこう飲み屋さんなどもあります。
滝田ゆうの漫画「寺島町奇譚」の最後の方のシーンでは、空襲で消滅してしまう街が描かれていますので、現在の街並みは戦後復活したものでしょう。それも年月とともに更新され、イメージは薄れていますが、東武のガードに近いところに、通りを見下ろすバルコニーの建物が打ち捨てられたように残っています。

隅田湯もこのすぐ近くです。鐘ヶ淵駅前の踏切から斜めに、玉ノ井へ通う人が行き交った昔の面影のある商店街を行き、急カーブを描いてくる東武線と再び出会うちょっと手前を左手に曲がったところにあります。
細い通りに面しているのでちょっと見にくいのですが、玄関はスペイン瓦を装飾に使ったアールデコ調というかちょっとインパクトの強いファサード、かつての街の賑わいを伝えているような気もします。
内部は外見から想像するほど派手ではありません。浴槽の背後はモザイクタイルの富士山です。ただ男女境にある合掌造りの山村と岸辺のタイル絵は、緑が濃い細密な絵で、これだけは昔風の趣です。
隅田湯 墨田区墨田3-23-16 15:30〜22:30 水曜お休み(祝日は営業)東武鐘ケ淵駅から5分