ともに生きる社会を 内山節(哲学者)

人間とは、横のつながりと縦のつながりの中で
生きているのだと思う

横のつながりとは自然や人々とともに
生きているということであり
縦のつながりとは受け継ぎながら
生きているということである

過去を受け継ぎ、未来につなげる
それは歴史とともに生きるということでもあり
亡くなった人々との関係や、過去に築かれた文化を
大事にしながら生きることでもあった

私が原発を廃止すべきだと考えるのは
単に危険だからということではない

原発事故によって故郷を追われた人々に
思いを寄せないような社会をこれからも続けていくのか

自然も被ばくしていることに何も感じない社会を終わりにしたい
過去の人々が長い時間を掛けて築いた地域を
一瞬にして人の住めないところにしてしまったことをどう考えるのか

すなわち私はともに生きる社会を創造したがゆえに
自然や他者、人々の過去の営みを犠牲にしながら展開してきた
時代の象徴としての原発を廃止したいのである

今日の横暴な市場経済、バラバラにされた個人の社会を
つくり直したいのも同じ理由からである

環境問題の課題がともに生きる社会をつくることであるとするなら
環境問題ではこの社会のあり方自体が問われなければならないはずである

だからこそ、それぞれの利益だけを主張する時代から
自然や他の人々の過去の営みに
優しいまなざしを向けられる社会をつくろうとして
多様な人々の動きが起きているのが、また今日でもある

しばらくは、この社会のあり方を変えたい人々と
変えたくない人々との綱引きが続くのだろう
変革期とは変えたくない人々が顕在化してくる時代でもあるのだから、である

<福寿草は早春の花です>