ホントが知りたい 食の安全
コンビニやスーパーのパンがカビない理由
ホントが知りたい食の安全 有路昌彦
ますます気になる食の安全。私たちの生活と健康に直接関係するだけでなく、ちょっとした誤解から風評被害が発生、何千億円規模の損失が出ることも珍しくありません。
多くの人が幸せに暮らすには、バランス良い世の中であることが大切。そのためには風評被害のようなダメージが発生しないようにすることが必要です。
この連載では、食と環境をテーマに、バランスよく持続可能になるにはどうすればよいかを専門に研究している筆者が、毎日の生活から浮かび上がってくる「食の安全」の疑問を解決します。
健康被害を引き起こす食品リスクのうち、「食中毒」が最大のリスクだと、前回お話ししました。
これはご家庭で調理する時にも全く同じです。作ってすぐ食べるのであれば問題にはならないことが多いのですが、手作りのお弁当で食中毒、手作りのおはぎで集団食中毒、というような食品事故が実はとても多いのです。
作ってしばらくしてから食べる作り置き的なものは、リスクが高くなります。
作ったものは冷蔵庫に入れておけばいいでしょ、と思われるかもしれません。確かに、それはその通り。
しかし、常温で何時間も置くことがある食べ物はありませんか? お弁当はその代表格です。
■菌をつけない、増やさない、殺す
冷蔵庫の中の温度は5度から9度くらい。食中毒の原因になる菌は6度以上になると増殖のスピードが速くなります。そのため、冷蔵庫の中であっても食中毒の原因菌が繁殖するケースはいくらでもあります。
ではどうすればよいのでしょうか。ここで「HACCP(ハサップ)」の考え方が役に立ちます。
HACCPは、アメリカで宇宙食の安全性を確保するために始まった、食品の危機管理の手法です。基本的には加工業者のための手順なので、家庭用ではありませんが、考え方は十分使えます。
まず最も重要なことは、食中毒の原因菌を「つけない」「増やさない」「殺す」の3大原則でコントロールすることです。
「うちはいつも掃除しているから清潔」と思う方も多いでしょう。しかしそれは正しいとは限りません。
食品加工場などと比較すると、一般的なご家庭のキッチンはかなり汚れているのが現実です。