本気か?クールジャパン政策 Part 2.
中村 伊知哉 | 慶應義塾大学 教授
前回の続きです。
私も産業保護の補助金には反対だ。
それよりも、支援措置として発動するなら、アナウンス(旗振り)、規制緩和(電波開放や著作権特区)、減税。それで民間の自主的行動にインセンティブを与えることではないかと考える。
そして、ハコよりヒトだと考える。
だが、インフラ整備(デジタル環境)や人材育成(教育)にはカネをかけてよかろう。道路予算の1割を文化と教育に回せれば、状況はたちどころに変わる。
地方高速道の車線を増やすより、知財の生産力を高める政策に重点投資してもバチは当たるまい。
しかも、日本の文化予算は他国に比べかなり低い。文化予算/政府予算は、日本が0.13%なのに対し、フランスや韓国は1%近くある。
文化政策のプライオリティーを全政策のどのくらいに位置づけるか、を考える機会であろう。
それは、予算にしろ規制緩和にしろ、どこにどう政策資源を配分するかの「目利き」が国民から信頼されていないせいもあろう。
コンテンツのよしあしを政治家や官僚が判断できっこない、という指摘はごもっとも。審議会のような権威の集まりも白眼視されがちだ。
私はかねてから日本に「文化省」を作るべきだと主張している。
文化、知財、ITに関する政策の司令塔を創設して文化立国を明確にする。だが、ことポップカルチャーのような「みんな」が作り上げる文化の施策は、「みんな」が考えるのがいい。
参加型の政策が欲しい。できるか。それを含めて、国としての本気度が問われている。
20年前、政府にコンテンツ政策を打ち立てようと企てた研究会の事務局を務めていた時、ある委員の発言が今も耳に残る。
「こういう政策は、本気で100年やり続けるか、何もやらないか、どちらかだ。」私は、「そうだ、政府は本気で100年やり続けろ。」と言いたい。
中村 伊知哉
慶應義塾大学 教授
1961年生まれ。京都大学経済学部卒。慶應義塾大学で博士号取得。1984年、ロックバンド「少年ナイフ」のディレクターを経て郵政省入省。 1998年 MITメディアラボ客員教授。2002年 スタンフォード日本センター研究所長。2006年より慶應義塾大学教授。内閣官房知的財産戦略本部コンテンツ強化専門調査会会長、総務省情報通信審議会専門委員、文化審議会著作権分科会専門委員などの委員を務める。