何のための「表現の自由」 千田有希より

「朝鮮人は殺せ」「出て行け」などという言葉が
日常的に連呼されているという
東京の新大久保などでのことである

東京新聞8日特報面はこうした「ヘイトスピーチ」(憎悪表現)と
「表現の自由」に考察を加えていた

ヘイトスピーチを取り締まる難しさは特定の個人や団体を
批判するのではなく、在日コリアンなどの
「不特定多数の集団」に向けられていることである
日本の現行法では民事でも刑事でも規制できない

記事では日本を含む176カ国が加盟する国連人種差別撤廃条約では
ヘイトスピーチの法規制を求めているものの
日本は関連条項を留保したままであること
ヨーロッパでは刑罰の対象になることが紹介されていた

ヘイトスピーチの規制に反対する側の論理は
「表現の自由」を侵害する懸念である

記事ではむしろ「表現の自由」を守るためにこそヘイトスピーチは
取り締まられなければならないことを指摘している点で逸脱である

ヨーロッパの試みの根底には「表現の自由」に名を借りたヘイトスピーチが
ナチスドイツのユダヤ人迫害などにつながったという猛省がある

言葉は単なる事実を伝えるものではない
個人であろうと集団であろうと、誰かに向かって「殺せ」と叫ぶことは
すでに相手の身体や精神に脅しをかける行為であり暴力である
「表現の自由」はどのような表現を守るべきなのかという思想抜きには
なり立たないことをあらためて考えさせられた

<キンセンカが咲きました>