ミツバチ大量死はネオニコ系農薬と強い相関

以前にアップさせていただいていますが、再度認識を新たにしたいと思います。

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「ミツバチ大量死はネオニコ系農薬と強い相関」、金沢大学の教授らが論文発表
オルタナ 3月5日(火)11時22分配信

成蜂数の経過日数による変化。スタークルメイトの高濃度溶液をS-high、中濃度溶液をS-middle、低濃度溶液をS-low、ダントツの高濃度溶液をD-high、中濃度溶をD-middle、低濃度溶液をD-lowと表す
ミツバチの大量死が日本を含めて世界中で報告されるなか、金沢大学理工研究域自然システム学系の山田敏郎教授らの研究チームが「ネオニコチノイド(ネオニコ)系農薬がミツバチ大量死と強い相関関係がある」との論文をこのほど発表した。ネオニコ系農薬はフランスなどで2006年から使用禁止になっているが、日本でもその使用の是非が問われることになりそうだ。

ネオニコ系農薬は主に殺虫剤として、コメ、果樹、野菜などの栽培に使われるほか、森林や公園などの松枯れ予防、家庭用の殺虫剤やシロアリ駆除などにも使用される。他の農薬と比べて使用量が少なくて済むので、特別栽培農産物に使われることもある。

研究チームは2010年から、ミツバチに及ぼす影響を調査するため、ネオニコ系農薬の長期投与実験を行い、成蜂や蜂児数の変化および農薬摂取量を追跡した。その結果、蜂崩壊症候群(CCD)の状態を経て消滅に至ることを初めて明らかにした。

CCDは、花粉や蜜など食糧が残る巣に、女王や卵、幼虫、さなぎなどを取り残したまま、ミツバチが大量失踪する現象で、巣別れとは異なる不自然な現象として注目されている。養蜂や農業だけでなく、生態系の危機につながる深刻な問題だ。

CCDの原因として挙げられるのが、ネオニコ系農薬だ。ネオニコ系農薬は、昆虫に選択的に毒性を発揮する。日本では、斑点米の原因となるカメムシを防除するために水田に散布されたり、松枯れ対策のために森林に空中散布されるなどで、これまでの農薬に取って代わりつつある。

極めて分解しにくく、強い毒性と浸透性を持っているため、従来の農薬よりも散布量、散布回数ともに減らせるとして、多くの農家が使用している。

■ フランスでは2006年から使用禁止に

ところが、フランスの最高裁判所は2006年、ハチの大量死の原因である可能性が高いとして、ネオニコ系農薬の使用を禁止した。だが、これまでCCDと農薬の関連は明らかにされておらず、日本では1990年代から現在まで広く使われている。

そこで、金沢大学理工研究域自然システム学系の山田敏郎教授、山田和子氏、和田直樹助教は、農薬が蜂群に及ぼす影響とCCDとの関連を明らかにするため長期間の野外実験を行った。

実験では、ネオニコ系農薬であるジノテフランを10%含有する「スタークルメイト」(三井化学アグロ)とクロチアニジンを16%含有する「ダントツ」(住化武田農薬)を使用。実験では、カメムシ防除で推奨される濃度の農薬をさらに10倍(高濃度)、50倍(中濃度)、100倍(低濃度)に希釈し、糖液と花粉ペーストの餌に混ぜた。

セイヨウミツバチ1万匹の実験群を8群用意し、2010年7月から約4カ月間、成蜂数と蜂児数の長期にわたる変化を写真上で計測した。

■ 濃度にかかわらず全ての蜂群が消滅

実験の結果、濃度にかかわらず、農薬投与後、成蜂数が急激に減少し、濃度により減少傾向に差異がみられるものの、群は最終的に消滅することが分かった。

高濃度のスタークルメイト、ダントツの実験では、最初に一度だけ農薬を含んだ餌を与え、12日目に農薬無しの餌と取り換えた。12日間で即死と思われる多くの死蜂が巣箱の内外で発生し、15〜18週間で群は消滅した。実際に散布される農薬の10分の1の濃度であっても、急性毒性により蜂群が崩壊したことが示唆されるという。

中濃度、低濃度の実験では、農薬入りの餌を群が崩壊するまで用いた。どちらも死蜂は見られなかったが、農薬投与後成蜂数は急激に減少し、中濃度では7〜9週間、低濃度では12週間で蜂群が崩壊した。山田教授は、慢性毒性により蜂群が崩壊した可能性が考えられると見ている。

さらに、死蜂が確認されないのにもかかわらず、蜂群は減少し崩壊することから、山田教授は「神経系に障害を起こすネオニコ系農薬によって、ミツバチは帰巣能力を失ったのでは」としている。

同じく毒性が強くても、有機リン系など従来の農薬の場合は、巣箱の周囲にミツバチの死骸が落ち、時間が経つとともにミツバチの数は回復していくとされる。

■ネオニコは、「農薬」ではなく「農毒」

山田教授は実験の結論として、論文では次のようにまとめた。

「ジノテフランやクロチアニジン投与後、蜂群はすぐに縮小してついにはCCDの様相を呈した後、絶滅した。すなわち、女王蜂は成蜂がほとんどいなくなるまで存在し、蜂児や食料は女王蜂がいなくなった時点でも蜂群中に存在していた。こうした現象によってCCDがミステリアスと言われているが、それは蜂群が絶滅するまでの一場面に過ぎないということを意味している」

山田教授は、「ネオニコは、毒性が強く分解しにくく、『農薬』というより『農毒』に近い。このまま使い続け、ミツバチがいなくなれば農業だけでなく生態系に大きな影響を与える。ネオニコの危険性を多くの人に知ってもらいたい」と語る。今後は、毒性の強い有機リン系の農薬と比較した研究を行う予定だ。(オルタナ編集部=吉田広子)