「心の傷」見つめ沖縄から福島へ 蟻塚亮二 精神科医

沖縄で暮らす高齢者に太平洋戦争末期の
沖縄戦の記憶が不眠や精神症状となって表れる

これまで世界保健機構(WHO)の診断基準では
PTSDはトラウマ体験から半年以内に
発症するとされていました
でも60年の時を経て発症する「晩発生PTSD」もあるんです

昨年から今年にかけて戦争体験者400人を対象に
PTSD調査の結果実に40%の人がPTSD症状を持っていた
阪神大震災でのPTSDの出現率は22%ですから
とても高い数字です

福島で1番大変だと思ったのは街の民生の復興の遅さです
街が街として成立するにはある程度の人口とか産業とか就職先
保育所、老人施設、そういうものがなくちゃいけない

それが今も機能していなくて心理的には中ぶらりんです
しかもいつになったら復興するというめどがない
就ける仕事は除染、がれき処理ばかり

この状況で私が1番怖いと思ったのは「軽い落胆」みたいなものです
重篤なうつ状態ではないのに、もう死んだ方がいいかなと思ってしまうことです

私自身30代と50代でうつ病を体験しています
うつ病ってのはとても困難があってそれに対して
「生きたい」と思って発熱している状態なんです

ある意味、相撲の徳俵に足をかけて踏ん張っている状態
自己防衛・保存本能なんです

ところが福島の「死にたい」は発熱して踏ん張っているのではない
ふつうに生活してて、ふと「死にたい」と思ってしまう
先の見えない不安。これが1番怖い

患者さんから「実は放射能が怖い」って話が出てくるようになった
それまでは口に出せなかったんですね
患者さんは増えています
新患が月に50人とか60人
街の復興が進まない重苦しさ、精神医学的にはもう限界に来ているのかと思う

・・・・・うつ病は非常に身近な病気でいじめや不登校でうつ病になり、自殺につながることも少なくない。そのうつ病が生きたいと踏ん張っている状態という指摘には本当に驚きました・・・・・・

<オクラの花が咲いていました。ハイビスカスの仲間だそうです>