本報告書は、平成19年の第4次評価報告書以来6年ぶりとなるもので、この間に出された新たな研究成果に基づく、地球温暖化に関する自然科学的根拠の最新の知見がとりまとめられている。
今後本報告書は、「気候変動に関する国際連合枠組条約」をはじめとする、地球温暖化対策のための様々な議論に科学的根拠を与える重要な資料となる。
同報告書には我が国の多くの研究者の論文が採用されたほか、報告書の原稿執筆や最終取りまとめにおいて我が国は積極的な貢献を行ってきた。
報告書の第1のポイントは「気候変動に人為的な活動が影響しているのは明らか」との位置付けだ。とりわけ20世紀半ばからの気温上昇は石炭や石油といった化石燃料の利用などが原因であり、最近100年間で地球の平均気温は0.78度上がったと指摘。工業生産や暖房需要などの人間活動が気候変動を引き起こした確率を95%以上とした。
第2のポイントは極端な気象の頻発を取り上げた点にある。報告書は「気候変動によって乾燥地域ではさらに乾燥が進み、雨の多い地域(日本を含めた中緯度地域)では強い雨が頻繁に降る」と警告。気候変動が原因とみられる異常気象が世界各地で発生していることにも言及した。
実際に欧州では洪水が産業や農業に大きな被害を与え、米国には大型ハリケーンが直撃。日本は異常な猛暑に見舞われ、竜巻で死傷者が発生する事態にもなった。
3番目のポイントは、温暖化の流れに歯止めがかかっていないとの指摘だ。報告書では2000年前後に比べて今世紀末の海面は最大82センチ、平均気温は4.8度上昇するとの予測値を示した。最新のデータや新しい分析モデルの導入で精度の高い予測数値を算出した。
平均気温の上昇が2度を超えると、気候変動に伴うリスクが高まるとされる。グリーンランドや南極の氷河が一段と解けて海面が上昇し、島しょ国・地域や低地の一部が消滅する可能性が考えられる。農業や水産業などが大きな打撃を受けるほか、動植物の生態系が変わる恐れもある。
気候変動がさらに進めば日本の砂浜が8割消失するとの分析がある一方、北極海の氷が解けて新たな航路ができるなどの利点もある。とはいえ、温暖化が過度に進めば人間や経済活動に不利益が多いことは、科学者らの間では一致している。日本経済新聞9月28日
◆気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書(自然科学的根拠)
http://www.jma.go.jp/jma/press/1309/27a/ipcc_ar5_wg1.pdf
◆気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書/気象庁HP
http://www.jma.go.jp/jma/press/1309/27a/ipcc_ar5_wg1.html
◆IPCC国内HP—第5次評価報告書
http://ipccwg1.restec.or.jp/
◆気候変動に関する国際連合枠組条約
http://www.env.go.jp/earth/cop3/kaigi/jouyaku.html