女性に多い味覚障害 原因はダイエット、ストレス

女性に多い味覚障害 原因はダイエット、ストレス…

高齢者にも増加 亜鉛含む食品で予防・改善

■20歳までに訓練

 子供の段階から味覚を磨こうと、「味覚教育」に力を入れるNPO法人もある。

 「薬の副作用や偏った食事を繰り返し、味が分からなくなる人もいます」。10月下旬、埼玉県春日部市の内牧小学校の家庭科教室。NPO法人「食育研究会Mogu Mogu」の代表、松成容子さんが4年生の児童約35人に語りかけた。

 児童5〜6人が「塩」「酢」「チョコレート」「砂糖」「昆布と煮干し」がそれぞれ入った透明のカップが置かれたテーブルを囲む。味覚の基本となる塩味、酸味、苦味、甘味、うま味の5つを体験。口に含んでは「酸っぱい」「苦い」などと感想を言い合う。女児(10)は「味覚のアンテナを鍛えていろいろな味が分かるようになりたい」ときっぱり。横川一美教諭は「塾や習い事で忙しく、味わって食べる機会が減っている。味覚が育つ時期に学ぶことに意義がある」と強調する。

 同法人は11年度から「味覚教育」をスタート。内牧小を含め小学校8校で実施、昨年度は約700人が受講した。松成さんは「20歳まで舌はどんどん発達する。いろんな食材をしっかりと味わうことで舌を訓練することが大切」と訴える。同学会の池田理事は、味覚を「磨くことのできる感覚器」と説明。「偏食のもととなる好き嫌いをなくすためには、子供のうちから味覚を鍛えることが有効」と話している。

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■高齢化で患者増加見通し 加齢・服薬も要因に

 味覚障害が女性だけではなく、高齢者にも多くなるのは、加齢による味覚低下を招くからだ。

 日本口腔・咽頭科学会によると、舌の上などにある味覚を感じる味蕾(みらい)という組織で、味を認識する。この味蕾が加齢とともに減少することが高齢者の味覚の低下の原因となるという。高血圧や糖尿病などの高齢化で発症しやすい全身疾患による症状の一環や、薬の服用による副作用もある。

 同学会によると、日本大学板橋病院の味覚外来を1年間に訪れた408人の全患者のうち、65歳以上の高齢者は174人で全体の43%を占め、年を重ねるほど、味覚障害に陥る可能性は高まっている。

 同学会が実施した調査によると、耳鼻咽喉科を受診した味覚障害の患者数は、2003年は年間約24万人と推定。高齢者人口が増えていることを背景に、「現在も症状を訴える人は増加していることが推測できる」(同学会)。

 高齢化に伴い、お年寄りの増加は避けられず、厚生労働省は11年3月、薬の副作用による味覚障害のマニュアルを作成した。発症後、原因である薬の服用中止が症状の改善につながるため、早期発見の意識を高めてもらう。厚労省は「『味を感じにくい』などの症状に気づいた場合、早めに医師や薬剤師に相談を」と呼びかけている。

(塩崎健太郎、村上徒紀郎)

[日本経済新聞夕刊2013年11月14日付]