ソーシャルメディアの歩き方

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ヤフーが池上彰さん的ニュースサイトを新たに作る理由

ブロガー 藤代 裕之 (2/2ページ) 2013/9/19 7:00 記事保存

奥村氏は、ザ・ページを「ニュースの副教材」と呼ぶ。記事の文字数は約1000文字とコンパクトに、なるべく図を入れるようにして、分かりやすく伝える工夫をしている。

具体的な記事は、「ニュースでよく見る第3のスマホ用OS『Tizen』って何?」や「賛否分かれる全国学力テスト、論点は何?」といったタイトルで、解説するものが多い。

図は編集チームで作るものもあり、打ち上げロケットイプシロンとH2Aロケットを比較する図も宇宙航空研究開発機構(JAXA)のサイトを参考に作った。

 ただ、かみ砕きすぎると「小学生の作文だ」と批判される。どのような記事が受け入れられやすいのか試行錯誤中だという。

■他社への配信も実施

「ザ・ページ」の記事の一例。新型ロケット「イプシロン」と「H2A」をわかりやすく比較した。
 社員は約10人。ヤフーという大きな組織ではなく、奥村氏は社長として、編集、営業、経理も担当している。読売新聞から1998年にヤフーに転じて以来、15年ぶりに取材もしているという。

月100本ほど配信する記事は外のライターや編集プロダクション(編プロ)に書いてもらい、原稿料も支払う。

 最近のニュースサイトは、NAVERまとめや、ハフィントンポスト日本版のような投稿型で、ブログなどソーシャルメディアの書き手に編集、投稿してもらう物が多い。

だが、「大学の研究者やアナリストなど専門家が執筆する記事は難し過ぎる。分かりやすくニュースを解説するライターを選んで書いてもらうことが重要」という。書き手の確保には苦労もあるようだ。

 「分かりやすい記事を書くライターを探しているが、分野に偏りがある。経済や旅行などは見つかるが、マクロ経済、国際政治に関して分かり易く書いてくれる編プロや書き手は少ない」。

ブログやホームページを探して声をかけるなど地道に書き手を発掘している。

 長らく関わったトピックス編集から離れて分かったことは、ニュースを生産する側と流通させる側では立場が異なるということ。「ヤフー・トピックスのすごさを実感する。面白いのになぜ取り上げてくれないの、と思ってしまう」と笑う。

ただ、独立した会社である以上、ヤフーからのアクセス流入だけに頼るわけにはいかない。

 アクセスを増やすために過激になりがちなニュースサイトが多いが、記事はヤフーだけでなく、ライバルポータルサイトのgoo、ニフティ、マイナビ、にも配信するようになった。

ソーシャルメディアなどの書き込みが多くなるほど、「ニュースの副教材」のニーズはあると踏んでいる。

藤代裕之(ふじしろ・ひろゆき)
ジャーナリスト・ブロガー。1973年徳島県生まれ、立教大学21世紀社会デザイン研究科修了。徳島新聞記者などを経て、ネット企業で新サービス立ち上げや研究開発支援を行う。法政大学社会学部准教授。2004年からブログ「ガ島通信」(http://d.hatena.ne.jp/gatonews/)を執筆、日本のアルファブロガーの1人として知られる。