◇健康な女性については「医療行為」と認めず
日本産科婦人科学会(日産婦)は、がんや白血病などの治療によって卵巣機能が低下する恐れのある女性患者が、将来の妊娠に備えて実施する卵子や卵巣組織の凍結保存について、実施施設に報告を義務付ける会告(指針)案を発表した。
関係学会との調整などを経て、来春以降の総会で決定する。また、健康な女性が将来の不妊に備える卵子凍結については、医療行為として認めず、注意点のみをまとめることにした。
指針案では、卵子採取が治療に影響を及ぼさないよう、病気の主治医の了解を得ることや、凍結卵子を使った体外受精で出産できる確率や問題点を患者に説明すること、患者が未成年の場合は成人後に改めて保存継続の同意を文書で得ることなどを求めた。実施施設は、日産婦に生殖補助医療実施施設として登録し、生殖医療専門医が常勤していることを条件とし、実施状況の報告を義務付けた。
健康な女性の卵子凍結については「医療とは考えにくい」として学会員が必ず順守すべき指針は作らない。ただし、実施した女性が不利益を被らないよう、実施にあたっての注意点をまとめる。
卵子凍結を巡っては、日本生殖医学会が11月、がん患者らの実施と、健康な女性の実施について指針をそれぞれ策定した。本人への説明の徹底を求めるとともに、健康な女性には40歳以上での採卵を推奨しないなどの内容を盛り込んだ。毎日新聞 12月07日
◆日本生殖医学会HP
http://www.jsrm.or.jp/guideline-statem/guideline_2013_01.html
医学的適応による未受精卵子あるいは卵巣組織の凍結・保存のガイドライン[PDF 112KB]
社会的適応による未受精卵子あるいは卵巣組織の凍結・保存のガイドライン[PDF 110KB]
未受精卵子および卵巣組織の凍結・保存を行う施設の要件について[PDF 144KB]
参考資料 パブリックコメント(募集期間 平成25年9月13日〜30日)集計結果[PDF 183KB]
本ガイドラインは、未受精卵子および卵巣組織凍結技術の適応について、悪性腫瘍の治療等、医学的介入による性腺機能の低下をきたす可能性を懸念する場合を「医学的適応」、加齢などの要因により性腺機能の低下をきたす可能性を懸念する場合を「社会的適応」として区別し、それぞれについて留意すべき事項を提示した。
その理由は、前者が未受精卵子および卵巣組織凍結技術の本来の適応であり、原疾患の治療へ影響を及ぼす可能性など、安全性の確保等についてより根本的かつ基本的な問題にかかわっていることから、後者より丁寧で十分な説明と配慮が必要であると本委員会が判断したからである。