発祥の地、建長寺でけんちん汁のおもてなし

発祥の地、建長寺でけんちん汁のおもてなし

(吉田館長秘伝の裏技)

ここから本文 下記の文とても興味深いので引用させていただきました。

石井苗子の健康術

建長寺のけんちん汁

 初詣をかねて、仲間と神奈川県・鎌倉の建長寺へお参りに行きました。建長寺の吉田正道館長のおもてなしは、けんちん汁と精進料理でした。

 けんちん汁は建長寺が発祥と聞いたことがありましたが、初めていただきました。精進料理は 殺生せっしょうをしないことが原則ですから、カツオ節も使ってないのだそうです。

私のように、けんちん汁と豚汁の味の区別もつかないような者は、黙っていただくしかないと思っておりましたが、あまりのおいしさに思わずしゃべってしまいました。


 「この香ばしさや油っぽさは、どこからくるものですか?」

 「そこを教えたら本当はいけないんだけどね、ごぼうをごま油でていねいにいためて、そこから出汁だしをとっていくんです」

 館長は徹夜でお料理をお作りになるのだそうです。除夜とは、もともと「夜を除く」という意味で、その言葉通りに鐘の音を聞きながら夜通し料理をお作りになる。そんなことも初めて知りました。

 けんちん汁だけではなく、なますも2種類。焼きなますと、甘いなます。焼きなますの方は、シャキシャキ感を残すようにいためる。

素材を別々にいためて何皿にも分けておいてから最後にからめる。驚いたのは甘いなますの方です。

使う材料の基礎が干し柿なのです。干し柿を刻んでひたひたになるまで酢に漬けてひと晩、そこに大根その他の材料を千切りにしたものを混ぜ、さらに三杯酢であえる。

ここからが凄すごい。盛り付ける前にアイロンの蒸気を使って、取り皿から分けるときに団子状態にならないようにサラサラにするのだそうです。

 「アイロンですか〜?」と私は声が大きく出てしまいました。「うそじゃと思っとるでしょ。本当にそうしてるんですよ」と、笑いながらおっしゃる。

 私は常々、なますに関しては健康食品として日頃からたびたび食べるようにしたいと思っていました。自分で作れないものかと考えておりました。なにもお正月だけ食べるお料理でもないでしょうと。

干し柿とはいいことを聞きました。今度家でやってみようと思います。でも建長寺の黒豆までは、さすがに作れません。硬くもなく、かといって軟らかすぎず、本当に絶品のお味でした。

 お酒は植物から作るものなので飲まれてもよいのだそうで、館長はフランスのムスカデというワインがお好きだそうで、噴き出してしまいそうになりました。

ビールも麦から作るのでいいのだとか、なんとなく変な感じですが、言われてみれば植物が原料には違いありません。

 私が「今年は神様に祈ることが思いつかなかった」とぼやくと、館長は大笑いされ、「変わった人ですな〜、どうして何もないの」と言われたので、

今から何者かになりたいと祈ったところでもう年齢的に遅くて何にもなれないからだと思うと言うと、「ではそのまま息をして、自分はただ生かされているのだと思いなさい」と言われてしまいました。

 神社やお寺であれこれ願い事を書いて置いていくのは、その願いをいったん忘れるためにやるのだそうです。自分の中にある欲や煩悩を書くことによって、神に預け、まっさらになって帰っていくことに意義があるとか。

 「今日を生き切ることは、今日を死に切ることと同じ」なのだそうです。 

もう今から何をやっても先が知れていると思うなら、それもいいでしょう、自由です。人間は失敗を繰り返しながら、死ぬまで生かされ続けているものなのだと教えていただき、ハッとしたことがありました。

 もし生かされているのだとしたら、祈ることを怠けてはいけないのではないでしょうか。祈ることがないではなくて、探さなくてはいけないのではないのかと。

 私はどうしても「世界に平和を」とか「家内安全」なんてことを祈れない性格をしています。もっと身近で具体的なことを探してみて、初詣ではなくてもいいから、神に預けて帰ってくれば気持ちがスッとする。これも前向きになれる健康法だと気が付きました。