予防教室での援助の仕方 一例

認知症予防ゲームの中の「3拍子」は、前で拍手を一つ打つのですが、不思議とリズムを外して躓かれることがあるのです。その時に救いの手を出したくなりがちですが、下手に手出しをするのは禁物です。プライドを傷つけるからです。

「しまった、しくじった」とドギマギしている人を、素早くそっと援助する。他の人に目立たないように救いの手をさしのべるのが、認知症予防教室では大事です。円形に座っているお仲間さんに、目立たないように上手に助ける方法が、“コツ”です。

出し惜しみをする必要は全くないので、書きます。隣に座っているスタッフが、ホンノ心持ち早く、手を前に伸ばすのです。「手を前に突き出す」と言ったら表現が荒いです。「肘を伸ばして」と私は言います。具体的だから間違いようがありません。そうして手を打つタイミングは、リズムに併せて皆と一緒にパチンと揃えます。

一瞬早く手を前に伸ばす、「肘を伸ばす」のが躓いた隣の人の視野に入るので、誘われるように手を出されて、パチンで揃います。以心伝心です。言葉では何も言わない援助の仕方、これこそが一つの優しさのシャワーだと思っています。躓いても、自然にすぐに収拾が付いて、楽しめるようになるのです。
実習の時にはこの“コツ”を噛んで含めるように話しますが、実例はなかなかタイミング良く現れません。

先日のリーダー養成講座で、偶然にも、間違える筈の無い隣席の方が、三拍子で躓かれました。私は反射的に肘を伸ばしました。2回ほどで収拾が付きました。
終わってから隣の受講生さんに「判りましたか」、正面に座っていた受講生さんに「見てましたか」と尋ねますと、破顔一笑、「判りました」「見てました〜、あのようにするのですね〜」と満面の笑顔を返してくださいました。

とても幸せな、講師冥利に尽きる思いをしたのでした。滅多にない珍しい養成講座での出来事でした。