第47回 千里コラボ大学校を開催しました。

第47回 千里コラボ大学校を4月12日(土)に開催致しました。

・オープニングは恒例の音楽演奏です。川上時子さんによるピアノ伴奏と曲目紹介、中住志津枝さんによるメゾソプラノ独唱で、アレッサンドロ・スカルラッティ作曲の「われを苦しめで」です。
ピアノの音と澄んだ歌声が絡みあって室内に響き渡り、受講者の皆さんは午後の一時その音色に聴き惚れていました。

・講演は「広島原爆体験と私の人生」と題して、深町陸夫さんにお話して頂きました。

・広島に原爆が投下されたのは昭和20年8月6日午前8時15分。その朝はよく晴れていたそうです。爆心地から約2㎞の自宅を出ようとした時、爆風に飛ばされて気を失いました。お父さんは直前に自宅を出てお亡くなりになられたそうです。
深町さんは終生忘れられない記憶の中から、講演当日に6枚の自筆画を展示され、パワーポイントでも映写してくださいました。

その1枚目は空中で炸裂した得体の知れないものから、強烈な熱光線が放出される様が描かれています。それは5〜6千度と言われています。この直射は免れたもののその爆風を全身に浴びて気を失う迄の僅かな間に、全身で受け止めた感覚を印象画に表現
されたものと、私は拝見いたしました。

・被爆体験は思い出したくない、話したくないという深町さん。その思いが変わったのは、十数年前、当時小学校6年生の孫の修学旅行先が広島であり、先生に話したことがきっかけとなったと話されました。
あの地獄を見るような戦争、そして被爆の中を辛うじて生き残ってきた人達は、その体験から得られた忍耐力をバネにして、戦後の復興と同時に、その後の人生を生きる支えとしてこられたのだ、と思っています。「いじめ」等で死を選ばざるを得ない子供達が
いる世相、生きていることがどんなに素晴らしく有り難いことかを伝えていきたい、と話されました。

・2枚目には、近隣の建物が燃え盛る中を、皮膚が焼け爛れ咽喉の渇きを訴える人達が、自宅の横を流れる川に水を求めてやって参ります。深町さんは気が付いた時はガラスの破片が身体に突き刺っていて、瓦礫の中からお母さんに助けられたそうです。その人達を水辺にエスコートする深町さん達の姿が描かれています。

・3枚目は川の中を流れていく見覚えのある皮のトランクを見つけ追い駆けて拾い上げる場面です。これは唯一つ手許に残ったものであり、その中には父が戦地で使用した防弾チョッキに包まれた祖父の遺品が入っていました。浅野家に仕えた祖先が私に託したメッセージだと語られました。

・4枚目は川で父を探す深町さんが描かれています。広島には7つの川があります。上流から遺体が流れてきます。皮膚は焼け爛れており識別は出来ません。父が常に身に付けていたドイツ製の黒皮の時計を目印に探したそうです。手を持つと遺体の皮膚が「ヅルッ」と剥げるそうです。それを厭わず一心に探しました。満潮になると遺体が逆流してきます。凄惨極まりない場面です。

・5枚目は集めた薪で荼毘に臥す光景です。6枚目は川原に埋葬した場所から火の玉が燃え上がる絵図です。半焼けの状態で葬られた遺体から、死者の霊魂が抜け出ていったものでしょう。この様な現象を見た人が他にもいて、現に広島の原爆資料館に同じような絵が展示してあるそうです。

・当時放射能の影響は説明されていません。深町さんもその後、体調不良に悩まされることになります。凡そ1年3ケ月寝たきりの状態が続いた。最初は記憶があったが後半は意識が無かった。意識を取り戻し鏡に映った顔はとても自分とは思えなかった。よく生き返ったとの思いが強く、母の看病を感謝している。 

・3年経ってようやくバラックが立った。親を亡くした子供達が集まって生き延びた。物のない中で上級生は下級生の世話をし、下級生はよく上級生の教えに従った。駅の構内で靴磨きをする子供達の姿は今でも忘れられない。

・深町さんは昭和39年東京オリンピックの年に大阪に出てきて、物づくりをはじられる。この様な波乱に富んだ人生を経験して、多くの方々との出逢いを通じて「人生というものを学んだ」と仰います。83歳になられ、なお現役でご活躍の深町さん。「人生は短い。一日を大切に」と仰いました。

・日本は二度と戦争をしない国であることを祈っている。その為には平和を守る社会人としての豊かな知識を身に付けること。またこれから育つ子供達には、更なる豊かな互助精神で世界平和と戦争のない社会の実現に尽くして頂きたい、と語られました。

・講演の最後に20分程の時間を取って頂き、受講者からの質問にお答え頂きました。

・この講演会の当日、核兵器を持たない日本、豪州、オランダ等12カ国による「軍縮・不拡散イニシアチブ外相会合」が広島市内で開催されました。新聞記事によると外相等は平和記念公園を訪れ、原爆死没者慰霊碑に献花。市内の小学生が千羽鶴を外相に贈り、中学生が平和への想いを記したメッセージを英語で読み上げて渡した。その後外相達は平和記念資料館を見学した、と報道されていました。世界の多くの指導者が広島の地を訪れて、そこで繰り広げられた現実を見て頂くことが、世界平和の推進には必要不可欠なことと思わずにはいられませんでした。

・受講者から頂いたアンケートには、「命の大切さ、生き抜く力や工夫、体験を通しての人生論に感動しました」「実際に体験されたことをお話されたのでとても生々しかった。戦争は絶対ダメです」等のご意見を頂きました。今回の講演のために受講者配布用の
特別なテキストを作成して頂き、併せてパワーポイントの映像により、貴重な体験を分り易くお話し頂き有難うございました。

・最後に本日の講演に関係する図書を、千里図書館司書の久山理恵さんに紹介して頂きました。その中の1冊松谷みよ子さんの『まちんと』の読み聞かせをして頂きました。アンケートにも「今日は特別に司書さんによる絵本の読み聞かせがありました。大変良かった」とあるとおり、大変好評でした。ありがとうございました。

(原田)