第48回 千里コラボ大学校を5月10日(土)に開催致しました。
・オープニングは恒例の音楽演奏です。加福共之さんの曲目紹介と、
ピアノ演奏は川上時子さんによる、リスト作曲の「愛の夢」です。
加福さんは、リストはベートーベン没後ピアノの魔術師と言われて、
その音色に多くの女性ファンの失神者が現れたと、エピソードを交え
てお話頂きました。川上さんのピアノの音色は室内に優しく流れて、
受講者の皆さんは穏やかに楽しい午後の一時を過ごされました。
・講演は「シルクロード西へ“自分だけの歩き方”を求めて世界を歩く」
と題して、京谷寛さんにお話して頂きました。
・小学生の時、兄に連れていってもらった六甲山ロックガーデンハイ
キング、あまりの楽しさに友人を誘って六甲山に登ろうと何度もチャレ
ンジしたけれど小学生の二人には六甲山はとても大きな存在だった。
地図帳の中の六甲山が日本の中であまりにも小さなことを知った。
しかし、世界地図のページを開けると、大きいと思った日本がすっぽ
り入ってしまう大きな山脈、砂漠、氷原があることを知り、これ等を是
非自分の足で歩いてみたいと思ったと語り起こされました。
・その当時は、現在のように登山ガイドも無く、テントの張り方や火の
起こし方は図書館でボーイスカウトの教材のようなものを探し、ロープ
の結び方は神戸商船大学の先生が書かれた本で学び、地図は社会
科の地図帳をノートに書き写したりして、自分たちの“山ノート”という
ものを作って、山の知識を積み重ねていきました、と語られました。
これらのお話から知識を求める欲求度により、その吸収力が変わる
ということを教えられました。
・今回は、少年時代から想い続けてきた夢の一つである「シルクロード
の砂漠に立ち、その地域の人々と触れ合うのだ」という想いで出掛けた
旅。河西回廊を西安(昔の長安)からトルファンまで約3,000キロを、目
的地も宿泊場所も決めずに列車とバスで乗り継いだ、20 年程前の単
身浪漫冒険旅行のお話をして頂きました。
・『三国志』に登場する西安では、町を取り囲む巨大な城壁に驚きました。
町の中の賑わいとシルクロードの起点となる特に大きい西城門外の荒涼
とした景色は対照的であり、これがこの国の侵略の歴史の産物であるこ
とが理解出来ました。
・西安の町を見学し、食の冒険に挑戦したいと思いました。言葉も
通じずメニューと料理が一致しないので、隣の人が食べているのと
同じ物を注文するが、出された物はそれとは違うようである。
そのラーメンの熱さと辛さで全身汗びっしょり。店主が「おいしいだ
ろう」と笑顔で聞くので、「うん」と答える。
一人で知らない所で物を食べるのも大変である。
・西安駅から歩いて一時間半程のところに『大雁塔』がある。煉瓦
で積み上げられた古代の高層建築であり、孫悟空でおなじみの
三蔵法師がインドから持ち帰った経典等を保管するために建造さ
れた建物だそうだ。境内に入ると日本のお寺のような雰囲気が漂い、
外からのイメージとは異なっていた。大雁塔の階段は狭く急であり、
10ワット程度の薄暗い蛍光灯の灯りをたよりに螺旋状の階段を上る。
66メートルの上空からの西安郊外の景色は素晴らしい。
北は西安中心部の人口密集地帯が拡がる以外、他の三方とも農
地や未開の土地が拡がっている。三蔵法師はどんな景色を見たの
だろうか。
・世界で一番鉄道の乗車券を買うのが難しい国、中国。巨大な駅舎
には乗車待ちの人の列が構内は勿論、駅前広場にも延々と続いて
いる。やっとの思いで駅舎の二階にある外国人の切符売り場を探し
当てる。待つこと一時間半、窓口で希望する列車の予約表を渡すと、
「不有(メイヨー)」と拒否される。どうも三日位先でないと予約が取れ
ないらしい。周りの人たちの応援を得て何とか翌日の切符を手にし
た時は、全精力を使い果していた。
・世界最大の鳴き砂砂漠『鳴砂山』。砂丘に踏み入ると、粒の小さな
美しい砂が足元から水が流れるごとくサッと流れ出す。昼間観光客
が踏み荒らした砂丘を、夜の間に風が元通りにしてしまうらしい。
夜静かな時には砂丘全体がブーンと鳴る所から、『鳴砂山』と名付
けられたそうである。
・中国大陸を走るのはディーゼル機関車だ。柳駅で乗車しようとした
がドアが開かない。駅掌に聞くと窓の割れた所ところから乗れと言う。
駅では食べ物を売りに来るが需要に供給が追い付かず、猛烈な買
い物競争が展開される。長距離の鉄道の旅は体力勝負である。
ウルムチまでの人と荷物で足の踏み場もない状態の三泊四日以上
の旅、周りの中国人との触れ合いが始まった。砂漠を見ながら包頭
(パオス)やナンをかじり、「北国の春」をみんなで歌う旅は、心の底
からシルクロードを実感した旅でした、と語られました。
・多くの映像をご準備頂き、テレビや新聞では知り得ない中国やシ
ルクロートの様子を、ご自分の五感で受け止められた実体験をその
まま語って頂きました。言葉も通じ難い場所で必要に応じて筆談も
交えながら交流する京谷さんの感性に感動しながら聞き入っていま
した。どうもありがとうございました。
・最後に本日の講演に関係する図書を、千里図書館司書の石田ひ
ろさんに紹介して頂きました。ご多用の中、多くの関連図書を展示
して頂きありがとうございました。時間の制約もあり十分な時間を
お取りすることが出来ず、申し訳けありませんでした。
(原田)