■塩・砂糖加えて流出を抑える
「まずはゆで時間を短くすること。例えばほうれん草なら1袋分まるごと一気にゆでると時間がかかるので、少しずつゆでれば1回ごとのゆで時間は短くて済む」という。ゆでる前に切るのも避けたい。
切り口から栄養素が流出するためだ。ゆで汁に塩を加えるのも有効らしい。浸透圧の関係で流出が抑えられるという。塩を加えるのは色を鮮やかにするためと考えていたが、栄養効果もあったとは。
さっそく千切りにしたダイコンで試してみた。濃度1%の食塩水で3分ゆでたところ、水での場合に比べ少ない量の搾り汁で透明になった。食塩水の濃度を10%にまで高めてみると、ビタミンCの減少幅はさらに縮小。ただ1%はともかく10%はしょっぱすぎてとても食べられる味ではない。
原理が同じ砂糖水ではどうか。1%の砂糖水で煮ても、食塩水とほぼ同じ結果が出た。こちらはほんのり甘くておいしかった。酢や油でも試してみたが、これはほとんど効果がなかった。
ビタミンCの上手な取り方について吉田さんは「アクの少ない野菜の場合はゆで汁をみそ汁などに活用したい。いため物の場合は片栗粉を使って流出した分もあんにして食べられるようにするといい」と助言。栄養素を逃さない食べ方は結局、手早くおいしく調理することだと分かった。
記者のつぶやき
■実験、まさかの四苦八苦
単純な実験だったが、色の濃い野菜はヨウ素液の色の変化が分かりにくくて困った。パプリカは薄めることで乗り切ったが、ニンジンはヨウ素液と色が似ていてよく分からなかった。ほうれん草も緑が濃くて分かりにくかった。
苦労したのがジャガイモ。ヨウ素液に垂らすと紫になってしまう。ヨウ素デンプン反応といい、そういえば昔習った気がする。ビタミンCの作用で赤褐色が薄くなる一方、紫色は増えていく。どこが境目なのか、分からなかった。
実験後は野菜を使って鶏肉を煮込んでみた。大根おろしが多かったせいか、肉が軟らかくなり家族にも好評だった。最後にちょっと、報われた。
(河尻定)