都立高の厳罰化に歯止めを —チャイルドラインに期待されているもの
喜多明人(めぐろチャイルドライン代表・早稲田大学教授)
<東京、大阪で進む厳罰化>
東京都教育委員会は、2015(平成27)年度において、「生活指導統一基準」を全校実施する。この統一基準は、「規範意識の育成」を目的としており、以下の2つの領域で具体化される。一つは、身につけさせる規律・規範の明示(平成24年度)。もう一つは、懲戒処分を含む「特別指導の指針」の策定(平成25年度)である。とくに後者では、いじめ問題に触れている。「法令に基づいた懲戒の発出と改善の指導を行うための指針」の例示として、問題行動=「威圧的行動」・「いじめ」等の行為、覚せい剤やシンナー等の薬物の使用に対して、問題行動についての対処として=「停学、退学」、指導内容=矯正指導、面接指導と基準化された。この統一基準が、来年度から実施された場合は、都立高における懲戒処分の校内規定が改定(平成26年度〜)されて、遅かれ早かれ都立高の生徒から、いじめ=犯罪行為として停学・退学処分者が出てしまう危険性がある。大阪市は、橋元市長の肝いりで、「特別教室」制度を導入するようだ。レベル4(激しい暴力)、レベル5(きわめて激しい暴力)にあたる問題行動をした生徒は、一律「出席停止」として、一箇所に集めて警察など専門的に指導する「特別教室」に収容し、短期(レベル4)、中・長期間(レベル5)とし、実質的な矯正指導を行うようである(2014年6月11日、朝日新聞)。
<共通する問題とチャイルドラインの役割>
東京、大阪で同時に進行する厳罰化の方針は、いくつかの特徴を持つことで共通している。一つは、停学・退学処分(東京)、「特別教室」収容(大阪)の違いはあるが、両方とも、問題行動のレベルによって、学校から一律分離を行おうとしていることだ。二つには、学校の教育力を見限って、一律の厳罰・矯正指導で対応しようとしていることだ。三つには、生徒がなぜ問題行動に走るのか、その生徒の行動の原因、家庭などの背景あるいは生徒自身の思い、気持ちは一切考慮しないことだ。おそらく対症療法としては一時的な「効果」はあるだろう。一部の生徒の問題行動で、クラスの生徒の学習権が侵害されないための措置だとこれを正当化するだろう。しかし、そこで残されていく社会は、「邪魔者は排除」の社会であって、多様な人間を認め合う民主主義社会からは遠ざかっていくに違いない。
生徒一人ひとりの悩み、辛さ、その生活の重さを受けとめて、生徒の立ち直りを支援していく、という“子ども支援の現場”として、チャイルドラインの実践的な役割が今まで以上に大きくなるように思えてならない。