タマゴを食べてもコレステロールは上がらない?

タマゴを食べてもコレステロールは上がらない?
(2/3ページ)2014/7/4 6:00

 ちなみに米国農務省の基準では、健康な人は1日300ミリグラム以下が望ましいというから、タマゴ1個でかなりの分量を取ってしまうことになる

 ところがタマゴを食べるとコレステロール値が上がるのかというと、そう単純ではない。

■世界各地の実験、1日1〜2個1〜2カ月続けても影響なし

安価で良質なタンパク質を取れるのがタマゴの魅力だが……

 『健康と脂質摂取』などの著書がある九州大学・熊本県立大学の菅野道広名誉教授は「世界各地の実験では、1日1〜2個のタマゴを1〜2カ月食べ続けてもコレステロールには影響がないという結果が出ている」と話す。どうしてなのか

 実は体内のコレステロールのうち、食事から摂取しているのは一部にすぎず、8割程度は肝臓など体内で作り出しているのだという。問答無用で悪役と見なされやすいコレステロールだが、細胞膜を構成するほか、脂肪の吸収に必要な胆汁酸や性ホルモンの原料となり、体には欠かせない成分だ。

 体内のコレステロールを一定の値に保つように肝臓は生成量を調節するので、食材での摂取量が多いと肝臓の生成量が減ってバランスが保たれる。逆にいうと「タマゴを減らしても肝臓が多くつくることになるのですぐに値が減るというわけではない」(菅野名誉教授)。

■吸収度合いに個人差、日本人は3割が上がりやすく

 タマゴが即座にコレステロールの上昇を招くという誤解は100年前の実験から生まれた。ロシアの研究者がウサギにコレステロールを食べさせたところ、動脈硬化が起きた。

 これをもって「コレステロールが高いタマゴ=動脈硬化の原因」の図式が広まったわけだが、そもそもウサギは草食動物。動物性脂質であるコレステロールの体内調整機能がないので、人間とはまるで違う結果になる

 だから人間はタマゴを好きなだけ食べていい、とは残念ながらならない。

 一般的な人は1日1〜2個のタマゴでコレステロールが上がることはないのだが、食材からの吸収度合いには個人差がある。食生活をみると明らかに高そうなのに、数値の低い人がいるのはそのためだ。

 「日本人の場合、3割程度の人は上がりやすい」(菅野名誉教授)。それが遺伝によるものなのか、肝臓機能の不調によるものなのか、体内の“初期設定”が違うのか、詳しいことは分かっていないようだ。