稀代の軍師「黒田官兵衛」・・・公開講座(9月2日)

(%緑点%)H26年公開講座『黒田官兵衛』の報告です。
・日時:9月2日(火)午後1時〜4時45分
・会場:大阪府立狭山池博物館 2階ホール(大阪狭山市)
・演題:
『官兵衛と播磨−思想と行動の原点ー』 
講師:中元 孝迪(なかもと たかみち)先生(兵庫県立大学特任教授・播磨学研究所所長)
『官兵衛と長政の戦い〜中津12万石から福岡52万国へ』
講師:天野 忠幸(あまの ただゆき)先生(関西大学非常勤講師)
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*公開講座の参加者*
・参加者数:99名(女性32名、男性67名)
・年 齢:57歳〜83歳
・地 域:橿原市、大阪市、吹田市、大東市、東大阪市、岸和田市、和泉市、松原市、藤井寺市、堺市、千早赤阪村、太子町、河南町、大阪狭山市、河内長野市、富田林市からご来場いただき、厚く御礼申し上げます。(関係者一同)

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(%エンピツ%)講義の内容[要約]
○『官兵衛と播磨ー思想と行動の原点−』(中元 孝迪先生)
1.官兵衛の全人像
・通説イメージ【稀代の軍師、最強のナンバー2】
・新イメージ【軍師から進化、天下を狙った有力な戦国大名、一級の文人】
2.官兵衛24歳、青山合戦で大きな手柄
・「わずかの勢を以て一戦に利を得、敵の大勢に打勝ち。勇名是より大いにあらハる」
(「黒田家譜」)…官兵衛150騎で赤松勢3000との戦い。赤松軍の裏をかくという智略に富んだ作戦が功を奏し、劣勢を跳ね返す逆転勝利を収めた。
・官兵衛の評価が高まる。←官兵衛の”即座の判断”(情報収集力)と迅速な行動力
3.親織田へ
姫路という地理的要衝(6街道交差)→情報の収集と分析
・次は誰が天下を取るか…視点の変化(「局地戦」から「広域戦」へ)
≪官兵衛、苦境に≫
・主家・小寺家は反織田へ→別所・荒木の叛乱→官兵衛説得も幽閉(有岡城)
・天正七(1579)年10月有岡城落城。1年ぶり官兵衛救出→黒田家はブレずに結束、筋通す一族と信頼。

4、「姫路城の無償提供」と「中国大返しの進言」(官兵衛の離れワザ)
・毛利攻め、本格開始→根城の設定(秀吉は三木城を想定していた)。官兵衛は、「姫路山は国の中央にして舟筏の便り有国主の可居地也」(「赤松播城録」)といって、姫路城を無償提供。
・「中国大返し」の進言→官兵衛は、「天下」絶えず頭にあった。秀吉と協働して天下へ。
5.播磨気質と官兵衛
・播磨気質とは、「叡智と反骨、乱暴さと先進性」…播磨の地政学的位置から形成された気質。中央政権対西の反政府勢力との狭間で、多様な手段で天下の方向を見定めようとする。→官兵衛もこの環境下で生まれたリーダー。
6.如水の思惑
・秀吉とともに協働してして天下を狙う。→秀吉が死んだあと、天下を目指したのか。
☆辞世の句.
おもひおく 言の葉なくて ついに行 道はまよハし なるまかせて
(意訳)(この句には、表には諦観、しかしその裏には、播磨を領土としてもらえなかった、天下を取れなかった悔しさがある。)(中元先生)

○ 『官兵衛と長政の戦い−中津12万石から福岡52万石へー』 (天野先生)
1.豊後中津12石へ(官兵衛への評価は妥当か)
・天正15(1585)年、秀吉が九州を平定。官兵衛は、毛利軍を指揮・監督、小早川隆景と北九州の領主を調略、日向根白坂の戦いで島津氏を撃破→官兵衛は、3万石から12万石(4倍増)へ。→冷遇でもなく、厚遇でもなく、妥当と思われる。(天野先生)
・長政の家督継承…天正17(1589)年、長政21歳に家督を譲与。「秀吉が官兵衛の野望を警戒したので、44歳の官兵衛が家督譲与した」→家督譲与は、息子が20歳から25歳頃に譲って、10年ぐらい援助する例が多くあり、官兵衛は異例ではない。また、本領安堵するといいながら、宇都宮氏を滅ぼした直後であり、豊前国人の反発を静める意味合いもあって、家督を長政に譲与。
2.関ヶ原の戦い
・長政の調略…慶長5(1600)年9月15日、関ヶ原で石田三成を直接撃破、起請文を交わした吉川広家が不戦(寝返り)。→家康が天下をとれたのは長政のおかげである。中津12万石から福岡52万石へ《40万石を超える加増は家康の次男(結城秀康)と家康の四男(松平忠吉)のみ》。
3.まとめ(天野先生)
・官兵衛と秀吉…九州平定時には隙間風なし、配慮された十分な恩賞。朝鮮出兵時に隙間風(石田三成の台頭により、豊臣氏と諸大名との関係が変化)
・官兵衛と長政…戦国大名の領国拡大戦争を終わらせた官兵衛。長政は官兵衛の縁を活用して調略を駆使し、徳川方の勝利に貢献。
・官兵衛は優秀だが天下をとれるかどうかは別問題(秀吉の次に天下が取れそうなのは、徳川家康、前田利家、毛利輝元)。官兵衛は領国拡大の戦いと思われる。

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*アンケートより(感想)(抜粋)
・時宜を得たテーマで、両先生の話はおもしろく時間を忘れて、楽しみました。(男性60代)
・今まで思っていた黒田官兵衛と違う色々な事が聞くことができてよかった。(女性70代)
・大変よい講師に、豊富な資料で、わかりやすい講座でした。(男性80台)
・ドラマの見方が変わる。旗幟の話、宇都宮をだまし討ちの話など面白かった。(男性70代)
・NHKのドラマを基本としながら、事実に基づく資料を使っての深く掘り起した話は面白かった。(男性70代)
・黒田親子の生き様がよくわかり面白かった。(女性70代)