「高地性集落と激動の弥生社会」

(%緑点%)後期講座(歴史コース)の第9回講義の報告です・
・日時:11月18日(火)am10時〜12時15分
・会場:すばるホール(3階会議室)(富田林市)
・演題:高地性集落と激動の弥生社会②
・講師::森岡秀人先生(日本文化財科学会評議員)
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*[前回の復習](H26年6月3日「高地性集落と激動の弥生社会」①)
◆高地性集落をめぐる議論は多様化
・第二次大戦後、台地や丘陵の上がった遺跡を、中国史書の伝える「倭国大乱」に結び付け、戦乱に対応した防御的性格の強い集落と考えた。(小野忠凞氏が山口県島田川遺跡の調査を通して、「高地性集落」を2世紀の大いわゆる倭国大乱と結び付けて解釈し、瀬戸内海地域に特に集中していたこともあって定着していたが、同地域の盛期は紀元前二世紀〜一世紀にさかのぼることがわかり、別の解釈が求められるようになった。)
・弥生時代各期の暦年代が、年輪年代法の成果により再検討
・高地性集落には、「実戦は少ない」、「物質文化が先取りして入っている」、「平地の中継集落を介在しない直接的な交易がうかがえる」、「常時居住するものか、季節的・一時的に移動するものか」、「特殊な集落と捉えないで、他の環濠集落との関連性に着目し、地域の拠点となる集落」など、個別の研究の蓄積が求められている。

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(%エンピツ%)講義の内容
高地性集落の分布(右の資料を参照)
・第一次高地性集落の分布…畿内から瀬戸内海沿岸にかけて多く造られている。(九州・熊本以南や中部地方以東には殆ど造られていない。)
・第二次高地性集落(「倭国乱」・二世紀頃)…高地性集落が、九州・熊本まで南下し、東海地方まで広がる。→ 弥生時代末期以降の高地性集落の分布の中心が北陸の能登・越中・越後に移る。

さまざまな高地性集落(抜粋)
会下山遺跡(えげやまいせき)(兵庫県芦屋市、標高180m)(*右の写真を参照)
代表的な六甲山地の高地性集落(弥生時代中期後半〜後期前半)。大阪湾をのぞむ尾根上に生活跡(祭場跡、竪穴式住居跡、柵跡、倉庫跡、火炊き場跡、墓跡、など)の遺構がみられ、弥生土器や石器、鉄器、青銅器などの遺物が発掘。漢式三翼鏃は中国渡来の希少品である(外来品が、先に高地性集落に入ってきている)。
(注)会下山遺跡は、森岡先生の弥生研究の原点です。
紫雲出山遺跡(しうでやまいせき)(香川県三豊郡詫間町、標高352m)
瀬戸内海に突出する三崎半島の山頂。記録的な石鏃の出土量で、近畿から瀬戸口にかけての弥生中期後半の石製武器の発達と高地性集落の盛行を結びつけた。

桜ヶ丘遺跡(神戸市東灘区桜ヶ丘町、標高240m)
銅鐸14点、銅戈7点の一括埋納遺跡。。(青銅器と高地性集落は密接に関係している)。…尚、桜ヶ丘5号銅鐸は、美しいシャープな線で芸術性の高い素晴らしい銅鐸です。(森岡先生)
竹林寺天文台遺跡(岡山県浅口市、標高340m)
現代の天文台と遺跡が見事に重なっている。ここは、広い地域(四国の北岸の全体が見える)を望むことができる。弥生時代後期の竪穴住居跡があり、岡山平野の土器も持ち込まれており、鉄器、投弾石も出ている。広域的なつながりの中で必要とされた監視的な施設と考えられる。
拝鷹山貝塚(愛媛県宇和島市、標高100m、眼前にリアス式海岸)
弥生時代後期前葉、貝塚より多量のカキ。高地性集落から海の産物が出土(高地で定着した生活をしている)
山元遺跡(新潟県村上市、標高40m)
弥生時代後期後半。越後平野を一望できる高所に立地。居住域と墓域。土器の多くは東北南部系土器(縄文が施された土器)。最前線か、北からの触手か。日本海側では最北、東北系土器文化圏では初めて確認された列島北限の高地性集落。

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**まとめ**
人間が生活をするのには適さないと思われる山地の頂上・斜面・丘陵から、弥生時代中期〜後期の集積遺跡(すなわち高地性集落の遺跡)が.見つかっており、その性質についてさまざまな議論が提起されている。…「高地性集落」という学術語は、遺跡(実体)と歴史(上位概念)の中間にあるミドルレンジ・セオリー(中位理論=結論に達する以前)である。従って、用語や性格を含め、今後とも批判的な姿勢は必要である。実戦の形跡は少なく、目的を異にする高位立地の類別は蓄積をもつ地域研究が大きな推進力となる。(森岡先生)
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(%ノート%)連絡事項
◆12月2日(火)現地見学「長岡京跡・恵解山古墳など」
・集合時間:10時半(阪急・西向日駅)(小雨決行)
・レジュメ(11月11日の講義)を持参して下さい。
◆12月6日(土)am4時05分〜4時45分NHKラジオ第一放送「ラジオ深夜便」に、小野恭靖先生が出演。話のテーマは「ことば遊びのススメ」で、“しゃれ”“なぞ”“回文”“判じ物”などの日本語のことば遊びに焦点を合わせたお話。
◆11月26日(水)pm10時〜NHKテレビ「歴史ヒストリア−和食はどうしておいしくなった?」に、天野忠幸先生が出演。…三好家の研究【足利義輝の三好亭御成】が出演につながったとのこと。