いじめとは何か 教室の問題、社会の問題 森田洋司より その9

*日本の子育て風土
・国際比較調査を見ても、日本の子どもたちは
家庭の中で特定の役割を負うことが圧倒的に少ない。
家事を手伝うことも少なく、手伝えばお駄賃を
要求する子どももいる
また、勉強することが、あたかも子どもの家庭での
役割のように考えている親も多い
しかし、勉強は家族集団を営むための仕事ではない

・こうした日本の子育て風土の中で、子どもたちは
家庭といえども集団の1員としてしなければならない
仕事があるのだ、という認識を育むことが
おろそかになっている
家庭でも「柔らかな行為責任」の伴う
ソーシャル・サービスの領域やボランティア活動と
呼びうる領域があり、これらが日常の義務的な役割の
延長上にあることさえ
理解する機会を失ってしまっている

家庭は人格のコアを形成する集団であるだけに、
市民意識の基盤を幼いころから体得させ、
実践させていくにふさわしい。
ただそうはいうものの、家庭の中を見渡してみると
子どもたちに担わせる役割は、ほとんどなくなってしまっている

・「集団を構成しているメンバーであるならば、
引き受けなければならない仕事や役割があること」
「それを引き受けることはメンバーとしての義務と責任であること」
「仕事や役割は与えられるだけでなく、
自分で探して見つけ出すものもあること」
「決められた仕事や役割だけでは集団の活動は
維持できないこと」といった
集団の中での役割についての基本的な考え方は、
以前なら意識しなくでも家庭生活の中で
自然と身につけさせることができた。
しかし、これらの社会的機能が家庭から
失われている今日では敢えて意図的に子どもたちの
生活の中に組み込む工夫をしなければならない

・このことは、今日の日本の学校教育では、
子どもたちが家庭教育で学ぶべきことを身につけてきたと考え、
それを前提にして教育を進められなくなった事を意味している
一方、学校での役割教育は家庭以上に重要な働きを持っている
それは、学校は「社会のミニチュア」と言われるように、
社会の中の自己のありかたについての考え方を身につけ、
1人前の社会人としての能力を培い
実践するための多様な学習資源を備えた場だからである