ビゼー《アルルの女》〜名曲再入門〜

(%紫点%)後期講座(文学・文芸コース)(9月〜1月:全13回)の第12回講義の報告です。
・日時:1月15日(木)午後1時半〜3時半
・会場:すばるホール(2階カルチャールーム)(富田林市)
・演題:ビゼー《アルルの女》
・講師:近藤秀樹先生(大阪教育大学非常勤講師)
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ビゼーの略歴
ジョルジュ・ビゼー(Georges Bizet 1838−1875)は、フランスのの作曲家。ビゼーの代表作は《カルメン》。次いで広く知られているのが《アルルの女》である。1872年、ドーテの戯曲《アルルの女》のために書いた付帯音楽は、ビゼー生前には評判が芳しくなく死後再評価された。さらに演奏会用に編曲された組曲(第1組曲、第2組曲[ギロー編曲])も称賛を博した。1874年、代表作であるオペラ《カルメン》は、75年に初演されたが、不評であった。後に名声を上げたが、そのときすでにビゼーは敗血症のためこの世を去っていた。

《アルルの女》はお芝居のBGM
この曲は、ドーテ脚本の戯曲《アルルの女》がつくられ、劇中で演奏される付帯音楽がビゼーに依頼された。【付帯音楽】…要所要所で音楽が使われるが、それ以外は普通のお芝居と同じで、歌手は舞台に登場せず、俳優の演技によって物語が展開される。当時は録音・再生の技術がなかったので、舞台で劇が演じられている間に、リアルタイムに演奏が行われた。このような劇のBGMとして書かれた音楽を、「劇音楽」とか「付帯音楽」という。

○ (%音符1%)戯曲『アルルの女』(あらすじ)
「南フランスの大きな農家の息子フレデリ(主人公)は、父を早く亡くして、母と知的障害をもつ弟と暮らしている。ある日、アルル(南フランスのプロヴァンス地方)で遭った美しい女、〈アルルの女〉に心を奪われ、結婚を切望する。しかし、フレデリにはヴィヴェットという純情な許嫁がいる。フレデリは、アルルの女のことがどうしても諦められずに悩む…日に日に衰弱していく。息子を見かねた母は、ついにアルルの女との結婚を許す。そして許嫁のヴィヴェットもフレデリを愛するがゆえに、自らが身を引こうとする。ヴィヴェットの深い愛に心をうたれたフレデリは、アルルの女をあきらめヴィヴェットとの結婚を決意する。…二人の結婚式の日、おりしも村は、聖エロワの祭りで賑わっている。そんな中、フレデリはアルルの女がほかの男(情夫)と駆け落ちをすることを知ってしまう。フレデリ—は嫉妬に狂い、一緒にいたヴィヴェットを突き放して、情夫に掴みかかる。…この騒ぎの後、フレデリは、婚礼の祝いの陽気なファランドールを踊って、まわりを安心させようとするが、ヴィヴェットも母親も心配でならない。フレデリは寝床に入るが、夜明け頃、苦悩に堪えかねて、ついに窓から身を投げる。」

○(%音符1%)二つの演奏会用組曲《アルルの女》
第1組曲
・ビゼーは、戯曲『アルルの女』の初演後まもなく、27曲の中から自分の気に入っている曲を四曲を選び、演奏会用の組曲を編曲した。
・〈前奏曲〉、〈メヌエット〉、〈アダージェット〉、〈カリヨン(鐘)〉の四曲からなる。
第2組曲
・ビゼーの死後、友人ギローが編曲したもので、「アルルの女」以外のビゼーの歌劇から楽曲を加えて編曲した。
・〈牧歌〉、〈間奏曲〉、〈メヌエット〉、〈ファランドール〉の四曲からなる。
・第2組曲の方が有名になっている。なんといっても、あの〈メヌエット〉が第三曲として入っているからであろう。…編曲者ギローが、勝手にビゼーの歌劇《美しいパースの娘》から転用したものであり、《アルルの女》の中のフルートのソロ曲として広く知られている。

***あとがき***
◆戯曲『アルルの女』は悲劇の物語。フレデリは最後に自殺を図るまで恋を募らせたアルルの女は、(幾度も話題に挙がるが…)劇中に一度も登場しない。姿をいっさい現わさないアルルの女。この女に翻弄される青年とその周りの人々(この心理描写に醍醐味がある)。
◆アルル(Arles)は、農村に暮らすフレデリとその家族から見ると都会であり、アルルの女は都会の女ということになる。
◇今日は、音楽専用の部屋(2階カルチャールーム)での講義。近藤先生持参のCDで《アルルの女》の演奏を、解説付きで愉しんだ2時間。(なかなか音楽も奥深いものです。)