風向計 お母さんを責める前に 前田司郎より

飛行機で赤ん坊を連れた女性と隣り合った
僕は窓の外を見たり本を読んだりして過ごしていたが
女性は赤ん坊を胸の前に抱え
荷物を座席の下に入れるのもひと苦労で
まるで甲冑を着て飛行機に乗っているようで
しかもその甲冑は生きていて猫のように勝手に動くのだ

おせっかいにならない程度を見計らって僕も手伝ったが
その度に「すいません」と謝るように丁寧にお礼を言われた

赤ん坊は無慈悲な乱暴者で、髪を引っ張ったり
前の人の頭を触ろうとしたり、おんぶ紐を外そうとしたり
おっぱいを欲しがったり、やがて泣き出した

事情を知らずに泣き声だけを聞けば
お母さんの監督責任を追及する人もいるだろう
どうか遠くのお客さん怒らないでください

彼女は休む暇もなく二人分の荷物を持って降りていったが
全く頭が下がる
お母さんてものはこんなにも大変なのか
その片鱗をみた思いである

たかだか数時間のフライトだったけど
この暴君と24時間つきあう母親は大変な忍耐だ
壮大な愛である

もし家族や行政のサポートも受けられず
1人で赤ん坊を育てないといけない環境でいたら
おかしくなってしまうのも仕方ないかもしれない

そういったお母さんを責める前に
もしくは子どもを産めや育てやと言う前に
まずはすべてのお母さんにもっと感謝すべきですね
昔赤ん坊だったことのある人は