3・11報道への違和感 若松英輔より

今年も多くの問題を残したまま
3月11日が過ぎて行きました
メディアはこの日の前後に様々な角度から
被災地の現状を報じました
それらにふれていると次第に強い違和感を覚えました

作家の遠藤周作は、人間の生には2つの次元があると
語っています。1つは人生の次元、もう1つは
生活の次元だというのです

人生の問題はしばしば明言することができない
しかし、私たちの心の中ではきわめて
大きな場所を占めている
それは垂直線を描くように、縦に私たちの生に深く根ざす

〜中略〜

しかしメディアが報じていた多くは被災地の生活をめぐってでした
それだけでなく、人々の人生の問題にふれることを
穏やかに回避しているように思われたのです

遠藤は人生と生活を真実と事実と言い換えることもありました
私たちは事実として確認できることに目を奪われ
真実を感じようとすることを忘れているのかもしれません

ことに2015年度で終わるとされる「集中復興期間」を
めぐる政府の態度には戦慄さえ覚えました

彼らの話を聞き、日本という国は、この4年間
何が「復興」であるかを真剣に考えることなく
進んできたことがよく分かりました

日本は今、目に見えない、命の存在を見失いつつある
感じていたのは大きな憤りだったのかもしれません