社会意識の構造 城戸浩太郎より(1970年刊)その2

既成事実への服従

権威に盲目的に服従する態度は、
既成事実として具体化してしまった以上、
いくら反対したって無駄だとあきらめ、
それに順応してしまう態度に転化する。

「軍隊ではありません」という自衛隊が、
戦車や航空機を持ち、軍隊として既成事実化したとき、
すでに軍隊ができてしまった以上反対したってしょうがない、
憲法を改正して再軍備を認めようと
最初の原理を覆してしまう態度だ。

この国民の側の心理に対応して、
支配者側にも特殊な性格ができる。
どの政策も明確な方針と理論に基づいて、
国民の支持を受けて実施するのではなく、
そのつど的に成り行き任せの政策をたてて、
それが既成事実となってから、
国民のアキラメによって正当性を獲得する。

これは、弱い自主性を放棄した自我が、
環境への働きかけをわざと放棄して、
成行きとして既成事実化したものに順応しようとする
「日本的マゾヒズム」の変形である。

丸山真男は、日本の軍国主義的指導者の性格と
ナチスの指導者の性格を比較し、
前者には常に明確な理論と見透しがなく、
既成事実への屈服によって特徴づけられていることを指摘している。

そしてこの軍国主義的指導者の性格は、
現在の保守陣営の政治家たちに、
そのままの形で移譲されているのだ

<ナズナ(ペンペン草)の花が咲いています>