少年事件が問うものは? 井垣康弘より その3

彼は捕まってすぐ死刑になると思っていました
青い電気椅子に座るか、赤い電気椅子にするか
彼は受刑者が選べると思い込んでいて
自分はどちらが似合うか考えていたほどです

審判の席では、いつも
「疲れた。どこか静かなところで1人で死にたい』
と言っていました

少年院に移ってからも彼は『死なせてくれ』と言い続け
その間は一切の性欲が消えていました
変化の兆しが見えてきたのは数年たってから
「無人島のようなところで1人暮らしがしたい」
というようになった
つまり、生きる意欲が出てきて、最終的には18歳で
普通の子に戻ったのです

その少年院には女子も収容されていて、夏になれば
水着姿で運動場からプールに向かいます
男の子たちはそれを見てはやし立てる
それまで何の関心も示さなかった彼が
その夏、一緒に手をたたいてはやし立てるようになったのです

脳内の性中枢が通常の発達に追いついて
やっと生きることに前向きになった、ということ
彼が被害者や遺族の悲しみについて
考えられるようになったのはそれからです

思春期の彼が自分は異常だと悩んでいることに周囲が気づき
医師から『発達が一部遅れているけど心配するな』と
助言できていれば展開は変わっていたと思います
母親がスパルタ教育をせずに普通に育てていれば
彼が相談していた可能性もある

<フリージャーが咲きました>