イラクへ派遣された自衛隊員約9000人のうち
在職中に自殺した隊員が29人いたという
派遣との因果関係は定かではないというが
日本人全体の自殺率は10万人あたり約20人だそうだから
無関係と考える方が難しいだろう
しかし、この数字はある程度予期されるべきものだった
ディヴィッド・フィンケルの「帰還兵はなぜ自殺するのか」
というルポルタージュが数か月前に邦訳されていたのだから
これはイラク、アフガニスタン戦争から帰還し
そしてひどい精神的な傷を負った若い米兵たちの記録だ
帰還兵200万人のうち毎年250人以上が自殺する
しかしこの裏側には、その手前で苦しんでいる者が
50万人いることも忘れてはならない
彼らは軍の用意した精神的な治療のプログラムを
受けることができる
それでも、自殺者は後を絶たないのだ
著者は大勢の声を集めるよりも数人だけに絞って
彼らとその家族の内面をぐっと掘り下げて見せる
想像で描いた戦争小説とは違う、どこまでも地味で行き場のない苦しみ
戦場での経験がいかに兵士とその家族をさいなみ続けるか
映画化の話もあるというが、日本人にとって
これを読むのが今よりふさわしい時期はあるまい