博士は1969年の論文で
単純に戦争のない状態を「消極的平和」とする一方
貧困や差別など構造的暴力のない社会状況を
「積極的平和(Positive Peace」と定義した
博士の定義はその後、世界の平和研究に大きな影響を与え
平和学の確立につながった
日本政府は「積極的平和主義」を
Proactive contribution to Peaceと英訳している
博士は「安倍首相の言う『積極的平和主義』は
日米の軍事的な同盟がベースだと思う
私の提唱した構造的暴力のないという概念は入っていないだろう」
と安倍首相が使う言葉の用法に首をかしげる
「成立すれば日本が米国とスクラムを組んで戦争をすることになる
そうすれば、日本がどこかの国から反撃され
最終的に日本に大きな災難をもたらす
この法案は『非安全保障法案』だ
法案の影響で、東アジアで軍拡競争が起きる
軍拡競争は多くの場合、戦争につながる
残念ながら日本の戦後70年は米国のイエスマンで失われた70年だった
東アジアの近隣諸国との関係づくりに創造性がなかった
戦後70年談話は「積極的平和主義の旗を高く掲げ」としているが
「旗は問題ではない。スローガンだけではなく、中身が必要だ」
具体的には「将来の東アジアの平和構築に向け
東アジアでヨーロッパのような共同体を作るために主体的に尽力すべきだ
その本部機関は地理的に沖縄に置くのが最適だ」
戦後70年間、海外で武力行使をしなかった日本の憲法9条に
大きな関心を寄せている
現段階では専守防衛は必要。(2項前段の)戦力の不保持は
今は現実的ではないが、遠い未来において世界で実現してほしい。
戦争放棄をうたう9条1項の理念を全世界に採用されるべきだ
*ヨハン・ガルトゥング博士は1930年ノルウェー・オスロ生まれ
オスロ大学で数学と社会学の博士号を取得
59年にオスロ国際平和研究所を設立、
世界各地の紛争の仲介者としても活躍
87年、もう1つのノーベル賞と呼ばれる「ライト・ライブリフッド賞」を受賞