戦後70年消えぬ心の傷 元兵員 残虐行為の悪夢

アジア太平洋戦争の軍隊生活や軍務時に
精神障害を負った元兵員のうち
今年7月時点で少なくとも10人が入退院を続けていることが分かった

戦争、軍隊と障害者の問題を研究する
埼玉大の清水名誉教授は
「彼らは戦争がいかに人間の心身を深く長く傷つけるかの生き証人」と
指摘している

彼らはいずれも80代後半以上で、多くは70年間にわたり
入院を続けてきたとみられる

清水氏によると戦時中に精神障害と診断された兵員は
精神障害に対応する基幹病院だった
国府台陸軍病院(千葉県市川市)に収容され
38年から45年で10400人に上った

この数は陸軍の1部に過ぎず、症状が出ても臆病者や
詐病扱いで制裁を浴びて収容されなかった場合も多いとみられる

清水氏は同病院の「病床日誌」〈カルテ)を分析
発症や変調の要因として戦闘行動での恐怖や不安、疲労の他
絶対服従が求められる軍隊生活への負適応、加害の罪悪感などをあげる

残虐行為が不意に思い出され、悪夢で現れる状態について
埼玉大の細渕富夫教授は
「ベトナム、イラク戦争の帰還米兵で注目された
心的外傷後ストレス障害〈PTSD〉に類似する症状」とみる

今後、安全保障関連法案が成立して米国の軍事行動に協力すると
「自衛隊でもおびただしい精神障害者が生じる」と懸念する

清水氏の父は旧満州に出征して捕虜となり戦後3年余り
極寒と飢餓にさらされたシベリアで森林伐採や鉄道敷設に従事させられた
晩年、認知症を患い入院し、夜中病室で叫んだ「ソ連軍が攻めてくるぞ」

妻子の顔や名を忘れても忘れられない恐怖
87年、79歳で息を引き取るまで苦しげにうわ言を繰り返した

「兵隊に入れば、戦場で殺すか殺されるかの苦しみを味わい
心身が衰えたときに記憶がフラッシュバックする
戦争体験者は2度苦しむんです」

<ムラサキツユクサがさいていました>