日本の反知性主義 鷲田清一より その3

「摩擦」を消すのではなく、「摩擦」に耐え
そのことで「圧制」と「頽廃」のいずれをも
回避するためには、煩雑さへの耐性というものが
人々に強く求められます

知性はそれを身につければ世界がより
クリスタルクリアに見えてくるというものではありません
むしろ世界を理解するときの補助線
あるいは参照軸が増殖し、世界の複雑性は
ますますつのっていきます

世界の理解はますます煩雑になってくるのです
私たちが生きるこの場、この世界が壊れないためには
煩雑さに耐えることが何より必要です

そのことがいっそう明確に見えてくるということ
それが知性的ということなのです
世界を理解するうえでのこの複雑さの増大に堪えきれる
耐性を身につけていることが知性的ということなのです

ここで大急ぎに付け加えておけば、知性的であるということは
「教養人」であること、「文化人」であることとは
何の関係もありません

<ウインターコスモスが咲いていました>