THE BIG ISSUE JAPAN 262より

自閉症の僕が生きていく風景 東田直樹

僕は決して強いわけではありません
けれども、他の人が僕をどう思うか、
あまり気にならなくなったのは
この世界で自分はちっぽけな存在だと気づいたからです

自分の人生の主人公は僕ですが
この世界の主人公ではないことを
両親から教わりました
現実は厳しく、障害があってもなくても
誰もが幸せにも不幸にもなるのだと知ったのです

小さい頃、僕は普通の大人にさえなれない
現実に押しつぶされそうでした
こんな僕が何にならなれるのか
まるでわかりませんでした
僕は自分のことが嫌でたまらなかったのです
大人になるのが恐ろしく、ずっと子どものままで
いたかったのを覚えています
そんな僕の気持ちを解き放ってくれたのは家族です

人と違う奇異な行動ばかりする僕を注意するだけでなく
どうにもならない時には、他人はそれほど、あなたのことを
気にしていないと笑い飛ばしてくれました

知識も僕を救ってくれました
小学校の普通クラスの授業で、世界には信じられないくらい
たくさんの人が暮らしていて、みんなさまざまな苦労をしている事を
学びました。勉強を続けていく中で、ニュースやドラマなども
楽しめるようになり、僕は地球に住んでいる60億人の1人に
過ぎないとわかったのです。そう考えると、
1人くらいおかしな人間がいても、構わないのではないかと
別のとらえかたもできるようになりました
植物も完璧な遺伝子ばかりが残るわけではありません
僕みたいな人間が、誕生した意味について向き合い
考えるようになったのです

ぼくは友達がいなくても、特に寂しいと感じたことはないです
それでは人間として未熟なのかもしれませんが、
友達づきあいが苦手な僕にとっては
幸せなことだと思うのです
だからといって、孤独が好きなのだと決めつけないでください

昔、僕がみんなの中にいるときに感じていた疎外感は
なくなりました。その理由は友だちができたからではなく
社会の一員として僕らしく生きていこうという気持ちになれたお陰です

<キンカンの実がたくさんなっていました>