真剣に話しましょう 小熊英二対談集より

社会運動の作り方ー世界を自分でかえるには

私は代議制と民主主義というのは別物だと思っています
民主主義とは「みんなが決定に参加できる」ということで
その要は直接参加です

しかし代議制は、地域の有力者や貴族が集まって
代議してくれるというもので、ルソーなどは封建制の遺物だと
言い切っています

民主政は本来、直接参加が可能な小さな国に向いています
国が大きくなったら王政か貴族政でなければ無理だというのは
18世紀以前の思想家にとっては常識で
それが民主政と両立するとは考えていなかった

ところが19世紀以降に「代議制民主主義」というものが
急速に広がっていきました
私はその理由は工業化と総力戦の時代だったからだと思っています

総力戦は大量の兵器と兵士が必要です
兵士や労働者のモチベーションを上げるためには
立身出世できるように身分制を廃止し
民主政の要素を取り入れなくてはならない
国民皆兵で女性も働かせるのなら、普通参政権は必須です

しかしそれと同時にトータルな工業生産と兵員数を増すために
国の規模は大きくしていかなくてはいけません
ところが国が大きかったら直接参加はできない
だから、代議制と民主主義という、本来は異質なものを
無理やりつなぐことになったわけです

現代でも、民主主義がうまく行っている国は、例えば北欧などの
小さい国で、人口700万人くらいだったりします
しかも地域主権が強いから数千人単位で直接参加ができる

もっと大きな国はたいてい連邦制です
例えばアメリカは州の独立性が高いだけでなく、8万くらい
基礎自治体があるし、住民の発議で特別区を作ることもできます

実質的な権限のある、住民参加の公聴会とか委員会の制度を
取り入れる国も多くなっている。そうでないと、参加意識を持てない人が増えて
移民排斥運動などのポピュリズムに流れてしまうからです

ところが日本の基礎自治体(市町村と特別区)は1741しかなくて
しかも自治体の権限がものすごく弱い。公聴会など名ばかりです
こんな制度でやっていたら「自分たちが決定に参加している」
という感覚など持てるわけがない

<サクラソウが咲いていました>