人間の脳が持っている3つの残念なクセ
Inc.:人間の脳は自然の驚異です。脳は呼吸を維持し、良いアイデアを定期的につくり出し、体の動きを連係させ、複雑な人間関係のもつれに対処し、謎に満ちた「意識」を生み出してくれます。
私たちの頭蓋骨のなかに収まっている重量約1.4kgのゼリー状の塊には確かに、ものすごい数の偉業を成し遂げる力がありますが、だからといって、それが完璧というわけではありません。
むしろ、完璧からは程遠いと言えます。進化の過程で、私たちの体には役に立たないうえに感染症を起こしやすい虫垂と、そうとはわからない程度の尻尾の付け根が残りました。
それと同じように、人間の脳も、今日に生きる私たちの生活を困難にしかねない、無益で奇妙な癖を祖先からいくつか受け継いでいます。
神経科学者のDean Burnett博士に言わせれば、実のところ脳は「多くの点でガラクタ同然」のようです。
Burnett博士は新著『The Idiot Brain』のなかで、脳が持つ多くの奇癖と欠点について詳しく解説しています(それがなければ脳はまさに驚異的なのですが)。
また最近では、『Smithsonian』誌のインタビューに応え、興味深い例をいくつか披露してくれています。
1. 乗り物酔いは脳のせい
サバンナに住んでいた私たちの祖先は、ヤリを投げたり、逃げたりといったスキルの上達に取り組む機会には恵まれていましたが、言うまでもなく、クルマに乗って走り回る練習などはまったくしていませんでした。
つまり、私たちの脳にはジグザグの山道に対処するための機能がいっさい備わっていないのです。そのため、決まって吐き気を催します。
「私たちが乗り物酔いをする理由ですが、本質的にその原因は感覚の衝突にあるというのがおもな見方です」とBurnett博士はインタビューの中で解説しています。「(乗り物に乗っていても)体と筋肉は、自分たちは静止していると考えます。
目も、周囲を取り巻くものは静止していると考えます。ところが、耳の平衡感覚は動きを感知するのです。つまり脳は、これらの基本的な感覚から相反するメッセージを受け取っていることになるのです。
進化論の観点から見ると、このような状態の原因となりうるものは1つしかありません。それは神経毒です。
結果的に脳は、相反するメッセージを受け取っているせいで、自身が毒されていると思い込んでしまいます。人間は毒を盛られたとき、どんな反応を起こしますか? 嘔吐しますよね」
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2. 脳は人の名前を覚えるのが大の苦手
人の名前を覚えるのに四苦八苦しているのは、あなただけではありません。どうやら私たちの脳は一様に、人の名前をなかなか覚えられないようにできているようです。
ですから今度、知り合ったばかりの人の名前を思い出せなくて恥ずかしい思いをしたら、脳のせいにすれば良いのです。
「脳には、顔専用の領域があります。また、脳は非常に視覚的でもあります。視覚は群を抜いて支配的な感覚なので、視覚的なものは、それが何であれ脳に組み込まれ、そこに記憶として残る確率がほかよりもはるかに高くなります。
そんなわけで、名前を取り込んで記憶にとどめるために、脳の意識の部分ははるかにたくさん働かざるを得ないのです」とBurnett博士は述べています。
3. 自己評価がとても下手な脳もある
上で挙げた脳に関する2つの欠点は面白いトリビアと呼べるものですが、最後に紹介する欠点には実にゾッとさせられます。
それは「ダニング=クルーガー効果」として知られるもので、あなたの人生にも間違いなく著しい影響を及ぼしてきたはずです(個人的な問題かもしれませんし、同僚を悩ませている可能性もあるでしょう)。
簡単に言うと、ダニング=クルーガー効果とは「能力が劣る人間ほど、自分は優れていると思い込みやすい」ということです。
「知能が高い人ほど、自分が学ぶべき事柄と、自分が知らないことをずっと良く認識している、とされています。脳は自己評価ができますが、それには知性が必要です。
あまり聡明でない人は、ほかの人たちと比較して自分の知性がどのくらいなのかをうまく認識できません。その結果、自信満々の発言が口をついて出るわけです。
自分が間違っているかもしれないということを把握できないのですから」とBurnett博士は言っています。そう聞いて、知っている誰かのことが頭をよぎったかもしれませんね。
3 Ways Your Brain Is Letting You Down|Inc.
Jessica Stillman(訳:阪本博希/ガリレオ)
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