【旬缶5】缶詰のサンマを侮ることなかれ!
文:カンパネラ編集部 / 写真:栗栖 誠紀
10.02.2014
春風亭昇太師匠、そして缶詰博士・黒川勇人氏とともに、美味しい「旬」の缶詰を探究するこのコラム、今回はサンマ缶。缶詰を使った特製料理とワインのマリアージュを楽しんだ。
秋の味覚といえば、やっぱりサンマ。
たまたま編集部を訪れた缶詰博士・黒川勇人さんとサンマの話に。
「焼きたての熱々のサンマにスダチなんかをきゅっと絞ると最高ですよね」
「これから最高のサンマを食べにくらげ庵に行きますよ」
「えっ、でも、くらげ庵は、缶詰しか出さないじゃないですか?」
「知らないんですか?!秋のサンマは缶詰に限るんです!」
そんな博士の後に付いて、またも世田谷のくらげ庵にうかがうことに。
サンマは缶詰に限る!
くらげ庵の周囲は、閑静な住宅街。庭木の多いお宅の木々が心なしか色づき始め、風もまた、秋の爽やかな空気を運んできます。
くらげ庵に入ると、カウンターに着物姿の昇太師匠がおられました。
「さすが博士!今日あたりに来るということは?」と、師匠。
「ありますか?美味いサンマ?」と、瞳を輝かせる博士。
「ええ、とっておきの旬のが入ってますよ」
「楽しみです!」
昇太師匠がカウンターに、この缶詰を。
「これは、マルハニチロ北日本がつくっている『北乃創彩 旬鮮さんま水煮』じゃないですか?」
「その通り!これはね、そんじょそこらのサンマ缶と違うからね」
師匠が缶のふたを開けると、そこには、かたちの整った立派なサンマの身が、ぎっしり詰まっていました。
「うわー!デカイ!」と、思わず缶嘆の声をあげる博士に師匠が、缶璧な解説を始めた。
「これは、期間限定製造の缶詰なんです。脂の乗った北海道の旬のサンマを生のまま缶に詰めています。ぼくもたくさんサンマ缶を見てきたけど、身の大きさ、太り具合はトップクラスだね」
「いい脂がにじみ出てますね!」と、さらに驚きの博士。
「この脂、まるで高級なオリーブオイルみたいな黄金色をしてるでしょ?でも、これ実は、サンマの身から出た脂なんですよ。味付けは塩のみ」と、さらに解説する師匠。
「素材に自信がある証拠ですよね!」
包丁で何やら刻む師匠が、お皿をさっと差し出しました。
サンマの切り身にエクストラヴァージン・オリーブオイルとぽん酢、大葉の千切りをあしらった逸品。
「どうぞ!」
「むむむ、これは、眺めているだけで脳の味覚中枢がギンギン刺激されますな。では、一口」
サンマを一切れ口に放りこむ博士。
「く、口溶けのサンマ。鼻腔まで秋の香りが充満しまする」と、幸せそのものの博士。
「これは、旬の缶詰ならではの美味だよね。きゅっと冷えた白ワインとあわせたいね」と、師匠。
「たまりませんな。師匠、やっぱりサンマは、やっぱりサンマは……」
「サンマは缶詰に限る」
編集部も味見しましたが、これは、家飲みのレベルが格段に上がると缶じました。
最後に、師匠が教えてくれた簡単な旬缶レシピをご紹介します。
北乃創彩 旬鮮さんま水煮
参考Webサイト:マルハニチロ北日本・北乃創彩ブランド
※2014年製造分から缶詰のパッケージが変わります(画像は2013年製造のもの)
◎サンマ缶のギリシア風サラダ
【作り方】
(1)サンマ水煮缶、一口大に切った旬の野菜、チーズ(種類は何でもよい)、エクストラヴァージン・オリーブオイル、レモン汁、黒コショウを用意する。
(2)缶詰を開けて、汁を切ったサンマの身を皿に盛りつける。野菜はサンマを彩るように盛りつけ、細かく切ったチーズを散らす。
(3)全体にエクストラヴァージン・オリーブオイルとレモン汁をたっぷりかけ、最後に黒コショウを振りかけて缶成。
春風亭昇太(しゅんぷうてい・しょうた)
落語家。1959年、静岡県静岡市(旧清水市)出身。東海大学史学科日本史課程中退後、春風亭柳昇に弟子入り。92年、真打ち昇進。2000年、文化庁芸術祭大賞受賞。日本テレビの長寿番組『笑点』大喜利レギュラー他、舞台、映画、TV、ラジオなど幅広く活躍。社団法人落語芸術協会理事。芸能界きっての城好き、缶詰好きとして知られる。
黒川 勇人(くろかわ・はやと)
世界の缶詰を紹介する「缶詰blog」を2004年から執筆中。公益社団法人日本缶詰協会認定の「缶詰博士」として、TVやラジオなど各種メディアで活躍中。著書は『日本全国「ローカル缶詰」驚きの逸品36』(講談社プラスアルファ新書)など多数。缶詰コラム「忙中カンあり」を朝日新聞beに、「百缶繚乱」を週刊漫画TIMESに毎週連載中。所属事務所は小曽根マネージメントプロ。