歴史ある建物を未来へ

先日、滋賀県東近江市にある近江商人博物館へ行ってきました。秋季企画展 シリーズ近江商人群像として企画された「小泉重助展」を見てきました。享保元年(1716)に麻布商いの行商からスタートし、今年創業300年をむかえる企業の礎を築いた小泉重助家が所蔵する古文書や写真などが展示され、激動の時代を生き抜いた不屈の精神、近江商人の生き様をそこに見ることができました。
企画展では、1915(大正4)年に小泉重助商店を始めた3代目重助を中心に紹介されていました。欧米への視察でビジネスを学び、「特殊特徴品主義」を基本とし、独自性の高い商品を扱いました。1941(昭和16)年には株式会社となりますが、その背景には個人商店では莫大な税金を徴収されるためという理由もありました。廃業の危機を乗り越えたのには、息子の伊助を含む若手たちの成長がありました。1945(昭和20)年には戦後の焼け野原で再出発をはかり、暮らしに必要な電熱器を扱いました。それが、照明器具事業へとつながっていきます。…とこれだけでもなんと壮大なドラマでしょうか。

さてさて、東近江市五個荘には小泉重助本宅が往事の面影を残し、継承されています。2015年に国登録有形文化財になったこの邸宅は、京都市文化財マネージャーの修了課題として取り組まれました。友人から相談を受けていた受講者の1人が、修了課題のテーマとして班の仲間とともに発表会にのぞみました。その時はまだ十分な調査、評価ができず、引き続き、上級講座でも研究を続けられました。「あきらめない第三者」として、所有者に寄り添い、また仲間とともに調査をし、専門家の協力を得て登録文化財への申請へと至りました。文マネ講座の修了課題として取り組んだのが2011年、それから4年を経てのことでした。

建物はただ建築物としてそこにあるだけでなく、歴史や文化など時間を超えて表現する伝承者でもあることがわかります。その価値に着目し、調査し、評価する「マネージャー」の存在が今後もっと広がっていくことを目標に第9期にむけて事務局でも準備が始まっています。

小泉重助展は11/27日まで近江商人博物館で開催中です。詳しくは下記ホームページを参照ください。近江商人博物館<http://omishounin.boy.jp/event1/>