経営の神様が語った経営者の必須条件とは?

松下幸之助「経営者の競争相手は”時間”だ」

経営の神様が語った経営者の必須条件とは?

江口 克彦 :故・松下幸之助側近 2017年02月17日

行動が求められるということは、だから、体力や。体力がないとあかんな。

これからの経営者は時代の流れに合わせようとすれば、当然激しい動きになるし、また激しい動きをするような会社でないとあかんけど、そうであるとすれば、そうした会社の動きに即応できるような、体力があり、健康がないと、これからの経営者には向いておらんね。

経営者は自分一人の健康ではないわけや。その経営者の健康によって、経営が混乱することもある。そのことをしっかりと心掛けておかんといかん。適当に体力を作る、そんな努力もせんといかん。

しかし、にもかかわらず、体を無理する経営者が多いようやな。それが仕事のことでならまだしも、夜遅くまで接待とか付き合いとか、まあ、ほどほどの付き合いというものも必要やけど、そういうことが過ぎて、体をこわす。そういうことでは、いかんわな。

休みの日もゴルフとかな、それも健康のために必要なのかもしれんが、かえって体をダメにすることもあるようや。仕事で命を落とすのは、まだええけどな、そんなことで命を捨てるとすれば、武士とは言えんわけや。

まあ、会社のため、と言うと、きみら、なんか抵抗があるかもしれんが、社員のため、また、多くのお客様のために健康に十分に注意せんといかんな。

それから、これからの経営者には夢があるかどうか、明確な理想をもっておるかどうかということやな。

これについては前にも言うたけどな、人間は夢なり理想なりがあってはじめて、それに向かっての自己向上が始まるもんや。また希望をもって力強く日々を歩むことが出来るんやね。それがないと人間としても魅力が出てこんのや。

大将が夢をもっておる。なんとか実現しようということで熱心にやっておると、部下の人たちも明るい気分になってくる。自分たちも一緒になってその夢を追いかけようと、そういうことになって、会社のなかも明るくなり一段と力強さを増し、大いに発展する。まあ、そういう事になるな。

夢がない、理想がない、そういうような状態で経営を進めるのは、提灯を持たずに、夜道を歩くようなもんやな。

「活動する哲人」であれ

最後にこれからの経営者にとって大事なことは、なんといっても人柄やな。結局はこれに尽きるといっても構わんほどや。経営者としての資質の基本はこれやからね。

なにも経営者に限らずこういうことは言えるけど、とくに指導者にはこのことが強く望まれる。どんなことが必要かと言うと、まず、温かい心というか、思いやりの心をもっておるかどうかということやね。

人間みんな寄りあって生きておる。社員みんなが力を合わせて仕事に取り組んでおる。助け合って心を合わせて一生懸命仕事に取り組んでおるんやから、そういうことに対しての感謝の思いが経営者にあれば、おのずから社員の人たち、部下の人たちに思いやりの心が出てくるわな、自然に。

ああ、ありがたいと。手を合わせると。だからできるかぎり部下のことを思いやる、心配りをする。そうでないといかんわね。