納得!「料理キット」が売れ続ける根本理由
別に手抜きがしたいワケじゃない
阿古 真理 :作家・生活史研究家 2017年03月17日
ネット食品通販Oisixの料理キット。中には有名料理家が監修したメニューも(撮影:今井康一)
農薬や化学肥料をなるべく使わず育てた野菜、食品添加物を極力抑えたソーセージや豆腐……。
「オイシックス」や「らでぃっしゅぼーや」など、安心・安全が売りの食品通販を利用するのは、料理が上手で手間を惜しまない人だと考えるかもしれない。しかし今、必ずしもそうとは限らない人たちが、こうした通販を積極的に使うようになっている。
こうした新たな利用者層の目当ては、下ごしらえ済みの食材と合わせ調味料をセットした料理キット。
たとえば、ミネストローネスープであれば、カットした野菜とベーコン、調味料、そしてレシピが一体になっており、利用者がレシピに従って料理をするだけで「きちんとしたご飯」を作ることができる。調理時間はメニューによってまちまちだが、短いものなら10分程度。長くても20分程度で作れるお手軽さがウリだ。
東日本大震災後、抵抗感が薄れた
料理キット人気は、各食品通販の業績成長を支えるほどになっている。2013年7月に「Kit Oisix」の販売を開始したオイシックスでは、毎週買う会員数が2016年12月末時点で4.7万人と、前年同時期から約2万人も増加。
定期購入会員数も前期末の約107.5万人から約130.7万人と大きく伸びた。生活協同組合のパルシステムも、2014年4月から「パルシステムお料理セット」を販売。福島県から静岡県まで10都県約70万人の会員のうち、7万点も利用があった週もあるほどの盛況ぶりだ。
一方、業界最大手のらでぃっしゅぼーやで2014年6月から販売する料理キットは今年2月時点で約18万食も売れた。「主力のカット野菜が微減になっている中、加工食品群とキットは同じぐらい伸びている」(開発担当の東海林園子氏)。
理由として「従来、レトルト食品などはおいしくないイメージがあったが、東日本大震災をきっかけに備蓄用に買って味がよいと知り、抵抗感がなくなったのでは」と話す。同社は今後、「時短」「健康」「プチ贅沢」の要素を拡充したいとしている。
加工食品や中食の市場が拡大し、「主婦が料理しなくなった」と言われて久しいが、実はこの新しい動向によって家庭料理の「外注化」がさらに進むとはかぎらない。その話をする前に、まずは各社の製品を比べてみたい。
オイシックスの「kit Oisix」は、管理栄養士監修の「デイリー」、幼い子どもがいる世帯向けの「キッズ」、有名シェフ・料理研究家監修の「シェフ」、カット済み野菜を使った「クイック10」の4種類、15メニュー以上を週替わりで販売する。
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