日本人はあまりにも儲ける気概がなさすぎる
ダメと決めず、みずから勝ち方を考えよう
ちきりん:そうですよね。「個々人がそれぞれの幸せを追求することが容易になる制度や国を作り上げる」という方向性こそが正しいってことに気づいてほしいです。
ショッピングセンターで一生を終えていいのか
ちきりん:そもそも「マーケット」っていう概念も嫌いですよね、みんな。
藤野:嫌いですね。
ちきりん:なぜそんな悪いイメージがあるんですかね? 労働市場という概念も嫌いだから、転職自体がよろしくないという話になってるし、中古品市場もなにやら下に見られている。市場って新しい価値をストレートに評価するし、ダイナミックで楽しい、ワクワクする……そういう感覚が全然ないみたい。
藤野:勝てる人が、元々、決まっていると思ってしまうんですよね。みずから勝ち方を考えようという発想がない。
ちきりん:確かに「強者は生まれつき決まっていて、自分はそうではない」という被害者感覚を持っている人が多いですね。でも実際にはスティーブ・ジョブズだって移民の子だし、孫さんが恵まれた環境で育ったわけでもない。にもかかわらず、「いやそれは例外です。あの人たちはスペシャルな人だから」とか言う。なぜそこまで頑張って「俺はだめである。絶対に勝てないのである」って言い張りたいんですかね?
藤野:失望最小化戦略に入り込んじゃっているんですよね。その状態であることが、ハッピーなんだと。
ちきりん:地方に生まれた時に、郊外型のショッピングセンターに行けば、そこそこかわいい洋服もこじゃれた雑貨屋もクレープ屋もある。「これで十分じゃん」と思う人と、「ここだけで人生終えるなんて絶対ヤだ、リスクをとってでも、もっと大きな場所に行きたい」って思う人の差なのかな。
藤野:「安心」の形が違うんでしょう。挑戦しながら、自己成長を楽しみにできるか、同じ毎日が連続して変化がない世界が好きかの違いでしょうね。
ちきりん:「変化しない世界」を安定と見るか、退屈と見るかは大きな差ですよね。
2019年、悲観的な未来にチャンスがある
ちきりん:これから日本経済の長期トレンドはどうなっていくんでしょう。
藤野:2020年でオリンピックの夢は終わるわけですが、2019年、団塊世代が75才入りするというトピックはインパクトが大きいです。あと5年したら日本でガンにを患うと大変なことになると思います。
ちきりん:どういうことですか。
藤野:これから団塊の世代がガン適齢期になってきます。それに対して外科医の数が増やせない。なぜなら、外科医になりたい先生があまりいないからです。医療過誤の裁判が急増しているので、外科医のワークライフバランスが悪くなっています。
記者:訴えられちゃう
藤野:そう、一生懸命リスクを負って手術した人ほど裁判のリスクが必然的に高まるということです。もう一か八かの手術はしたくない。
ちきりん:確かにコンタクトの処方をやっていたら楽ですもの。人を殺してしまうかもしれないっていうのは、ものすごいプレッシャーだから、強烈な使命感がないとできない。
藤野:じゃあ、その未来を知って、「それは大変だ!」で終わるんじゃなくて、「大きなニーズがあるかもしれない」と、思えるかどうかが大切ですね。ネガティブな未来を予測することは、それ自体では否定的なことではありません。どう解決したらいいのか、誰が解決できるかということを発想していくと、未来はチャンスが大きいと思えてきます。それが、「マーケット感覚」ですよね。
実際に起きていることなんですが、タイやインドの病院で「手術する権利」を押さえている人がいます。日本人で。10年後、日本で手術できない人がたくさん出てくるからでしょう。
ちきりん:それすごいですね。医療もそうですが、不動産も仕事も同じで、これからは日本で必要なものがすべて手に入るのは、ごく限られた人だけになると思うんです。で、大半の人は、就職時期になったらジャカルタで仕事を探す、病気になったらタイの病院で手術を受ける、介護が必要になったらフィリピンにある介護施設に入るってことになるかもしれない。
日本で家を買って美味しいモノを食べて一流の医療を受けられるのは、一部の日本人を含め、アジア全体からやってくる、リスクをとって成功した人達だけになるかもしれない。そういう意味では、「絶望最小化戦略なんて採っていたら、日本に住めなくなるよ」ってわかれば、そういう人も動く気になるのかもしれませんね。
藤野:そうですね。マインドの問題だから、本当に簡単なことなんです。
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