重大病が見つかるチェックリスト「アルツハイマー病」
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以前、このコーナーで「認知症」を取り上げたところ、予想以上の大きな反響がありました。また、その後もしばしば「認知症」に関するニュースを耳にすることもあり、あらためて「認知症」が社会的な関心が高いテーマであると感じております。
ということで、今回は「認知症」の中でも、最も多いとされる「アルツハイマー病」についてお話ししたいと思います。
「アルツハイマー病」は、脳が萎縮し、記憶力や思考力が衰え、認知機能に支障を来す病気です。
脳梗塞や脳出血、脳腫瘍、脳の炎症といった脳の病気も「認知症」の原因となりますが、認知症の原因で最も多いのが、「アルツハイマー病」で、認知症全体の過半数を占めています。
1907年、ドイツの精神科医アルツハイマーが、52歳で発症し、急速に記憶障害や認知障害が進行して数年で亡くなった女性の症例を、新しい病気として発表しました。
以来、初老期で起こる脳の認知障害を「アルツハイマー病」と呼んできました。
一般にアルツハイマー病にかかる人は、65歳以上の高齢者が多いのですが(老年性アルツハイマー病)、40代から65歳までの年齢に発症することもあり、老年性アルツハイマー病に比べて若い中高年者に発症することから、若年性アルツハイマー病と呼んでいます。
アルツハイマー病の患者数は、この10年余りで約14倍に増えています。その原因は加齢によると考えられてきましたが、最近、神経細胞のタンパクが変性してきて、神経原線維変化や老人斑ができるらしいことが原因だろうとわかってきています。
では、チェック項目(ページ下部)を見てみましょう。
【1】、【2】は、誰でも物忘れはしますが、どんな忘れ方をするかに着目してください。単なる物忘れと、アルツハイマー病による認知症との違いは、ある程度、区別できますから。
例えば、テレビのリモコンを置いたところを忘れるのは、単なる物忘れ。しかし、操作法を忘れたり、リモコンが何をするものかを忘れるのは、アルツハイマー病による認知症のおそれがあります。
【2】の場合、目の前にいる人の名前が思い出せなくても、どんな関係の人なのかを覚えているのは、物忘れ。
しかし、その関係がわからない(友人とか親戚とか)のは、アルツハイマー病。これらの症状は、初期症状はちょっとした記憶障害ですが、家族の名前を忘れるようだと病が進行している証しであり、極端な被害妄想や一時的な性格の変化を伴う場合も、進行していることが多いのです。
また、若年性アルツハイマー病では、頭痛やめまい、不眠、不安感、自発性の低下、抑うつ状態などの症状が出ることもあります。
発症すると、自己中心的になったり、以前より頑固になったり、他人への配慮がなくなったりします。もし【3】〜【5】に当てはまるようであれば、医療機関への受診をおすすめします。
【6】〜【10】は、アルツハイマー病になりやすい人です。【6】は、知的活動が大切だということ。本を読む習慣のない人を100%とすると、本を読む習慣のある人の危険度は65%に減ります。
楽器などを演奏する習慣のある人の危険度も20〜30%に減少。とにかく、知的刺激を受ける機会が多いと、脳の働きが衰えません。【
7】の運動習慣のない人を100%とすると、運動習慣のある人の危険度は50〜60%に減ります。ジョギングや体操などの有酸素運動が脳を活性化させる効果があります。
【8】は、30分以内の昼寝の習慣があると、危険度は5分の1に減るという報告があるのですが、60分を超える昼寝は、逆に発症率を高めると言われています。短時間の昼寝は定期的な睡眠サイクルに役立ち、アルツハイマー病発症を抑制しますが、寝すぎてはダメということです。
【9】の1年間に2回以上、酔い潰れた経験のある人は、ない人に比べて10倍も危険性が高くなります。
ただし、適度のお酒がアルツハイマー病に効果があるとの報告もあります。ビールだと1週間で中瓶1〜6本、すなわち1日1本以内が予防に効果的だとされています。
特にポリフェノールを含んだ適度の赤ワインがいいとの報告も多く、フランスの大学では、1日グラス3杯くらいのワインを飲んでいる人の危険が4分の1になったといいます。
飲みすぎるとアルツハイマー病になりやすくなりますが、適度に飲めば予防になるというのですから、お酒とのつきあい方も重要ですね。
【10】の生活習慣病では、特に食べ物が大切です。野菜や果物によるビタミンE、C、βカロテンなどが発症を抑えると言われています。
また、1日1回以上魚を食べている人は、ほとんど魚を食べない人に比べてアルツハイマー病の危険が5分の1に低くなるというデータもあります。
魚類に含まれるEPAやDHAが重要なのです。生活習慣病もアルツハイマー病も防ぐために、野菜や果物、お魚を積極的に食べましょう。
アルツハイマー病の治療は、薬物療法としては現時点では完全に治るというより、進行のスピードを遅らせる薬しかありません。
したがって早期に発見し、早期に治療を始めることに意義があります。そして、ならないような生活習慣を送ることが最も大切です。
非薬物療法では、行動・感情・刺激に焦点を当てた療法となります。例えば音楽療法、アニマルテラピー(動物介在療法)、園芸療法、運動療法、作業療法などがありますが、いずれも「1人にしない」「社会とのつながりを保つ」ことが大切です。
自宅に引きこもらせないように、通所リハビリテーションなどを利用するといいでしょう。
アルツハイマー病になってしまった時は、家族の対応のしかたがポイントとなります。あらゆる場面で、患者さん本人のペースに合わせてケアしてあげてください。
そしてご家族だけでなく、地域全体で認知症やアルツハイマー病に対する理解を深め、患者さんを温かく見守りましょう。