日 時 平成30年7月12日(木)14時〜15時30分
文学には、悲劇と喜劇ともうひとつファルス(ユーモア)が
あると信じで活動した坂口安吾の小説「桜の森の満開の下」
について解説をしていただきました。
彼は明治39年に新潟市に生まれ、その後東京に出てきた
作家で「新日本地理」では宝塚歌劇にも言及している人です。
前述の小説は、主人公の山賊が街道から八人目の女房と
なる女をさらってきたことから始まります。
この女は美人ではありますが我がままな人で、山賊に七人の今の女房を殺すように命じ、男は六人を殺し、一番醜い女房を女の下女にしてしまいます。
女はさらに都へ出て暮らすことを要求し、都では粋な物で身を飾り贅沢に過ごしますが、それにも飽きてきてついに首遊び(殺人)に熱中するようになります。
男はやがて女のキリのない要求が嫌になり、再び山へ帰ることにします。
男が女を背負って桜の満開の下を通りかかった時、男にしがみついていたのは美しい女性ではなく全身が紫色の老婆(鬼)で、その鬼の手に力がこもり男の喉に食い込んでいく・・・・というものです。
この構成は能の「桜川」や「妹背山女庭訓」等と類以しており、正に古典に学んだものと言えそうです。
桜の森の満開の下の秘密は誰にもわかりませんが、「孤独」というものだったのかもしれません。
また男が何かなまあたたかいものを感じたとすれば、自身の胸の悲しみであったのでしょう。