行動経済学と老前整理 ⑩

今日は出張。いよいよNHK[ニュース シブ5時」出演の日です。出るのは数分なのですが、トチらずしゃべれますように!

ナッジは聞きなれない言葉かもしれません。今日は老前整理とナッジの話です。

行動経済学の本を読んで、自分がそれまで抱えていた疑問の答えがあるように思い、喜んだのもつかの間です。学んだことをどうすればよいのか、老前整理にどのように生かせばよいのか、先が見えなくなっていた時のことです。

およそ2年前の2016年8月4日に出張で今日のように上京していました。たまたま30分ほどの時間つぶしのつもりで入った東京駅の近くの大型書店にキーパーソンの3人目の男、リチャード・セイラ—の『行動経済学の逆襲』(早川書房)が並んでいました。

手にとってぱらぱら見ると内容は、価値関数や確率加重関数といった難しい話が主ではなく、セイラーがなぜ行動経済学を選んだか、また行動経済学を選び取るまでの失敗談や、経済学者などから嘲笑された話など悲喜こもごもが書かれてあり、これは買わねばと思いました。

この日、仕事を終えて帰りの新幹線の中で読み始めました。この日まで知らなかった、行動経済学がどのようにして生まれ、発展してきたのかがよくわかりました。セイラーはプロスペクト理論や自らの研究結果を使って、世界をよりよくするために何ができるかを次のように考えていました。

「選択をする人が、自分にとってより良い結果になるであろう決定を、選択者自身の判断に基づいてするように影響を与えたい」

つまり押し付けるのではなく、人々が自分の目標を達成するお手伝いをすることをナッジと呼んでいます。ナッジと言えばもとは「ひじで軽くつつく」という意味です。

 ここで私のするべきことは、みなさんの老前整理をナッジすることだとわかりました。たぶん、私が新しい一歩を踏み出せたのは、この本のおかげだと思います。

セイラーが『行動経済学の逆襲』で紹介していたナッジの例は、アムステルダム・スキポール空港の男性用トイレを挙げています。

このケースでは利用者の注意をある特定の方向に向かせると、力を発揮するようなケースです。経済うんぬんの難しい話でなく、非常にわかりやすいと思います。

空港の小便器に黒いハエの絵が描かれている。

それだけのことです。男性が用を足す時に的があると注意力が高まり、周囲への飛び散りが減る。スタッフがハエ実験を行った結果、飛沫の汚れが80%も減ることが明らかになったそうです。これで掃除の手間、ひいては人件費にどれほど影響するか考えてみてください。(スキポール空港、ハエ、で検索すると写真がたくさん出てきます)

私はスキポール空港まで行けないし、行っても男子トイレに入れない。悔しい。

老前整理には関係ないけれど、これは使えるのではないかと思いました。例えば、幼稚園などの子ども用の小便器や高齢者が多く使用する施設の小便器はどうでしょう。

そこで、私もいたずら心を起こし、ある施設の方にお願いして子ども用の小便器に的のシールを張ってみました。(子ども用は女性用トイレの中にあります)

この時に、立って用を足した経験がないので、どのあたりに貼ればよいのか悩みました。このあたりでしょうでしょうか。

実際に実験していただければよいのですが、ご迷惑をかけてもいけないので、すぐはがしました。的の大きさは1円玉くらいです。

白いシールに渦巻きを書いて(ハエでもよいですが)、張るだけで、特別なことをする必要はありませんので、実験できる方は実験してみてください。お掃除が楽になるかもしれませんよ。

明日もナッジの話が続きます。

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