ただいま、ホームページのリニューアル中で、過去の仕事を振り返っています。
そのなかの拙著『老前整理をはじめてみれば』(PHPエディターズ)に書いたコラムを紹介します。(生協のみで販売)
■コラム 「もったいない」とはどういうこと? P94
「もったいない」についてさらに考えてみましょう。
ある町内に「もったいない三姉妹」と呼ばれる女性たちがおりました。なぜ「もったいない三姉妹」と呼ばれるかと言えば、三人とも「もったいない」が口ぐせだったからです。
ある年のクリスマスに、三人は色違いのマフラーをプレゼントされました。
長女はカナリヤ色と呼ばれる黄色、次女はポストのような赤、三女はクジャク色の緑です。
長女はこんなに素敵な黄色いマフラーは使うとすぐ汚れてしまう。汚してはもったいないからと、たんすの奥にしまいました。それを見ていた次女は、自分の赤よりも、長女の黄色の方が素敵だ。あの輝くような黄色は私の方が似合う、長女にはもったいない。それをむざむざタンスに眠らせておくのはもっともったいないと、長女の留守にこっそり持ち出して自分のものにしてしまいました。
三女は、緑の同じようなマフラーを持っているから、二本もいらないわ。かといって置いておくのはもったいないと、マフラーを失くした友人にプレゼントしました。
三姉妹は同じように「もったいない」と考えて行動しました。いろいろなもったいないがありますね。これには続きがあります。
次女が黄色のマフラーをしているのに気づいた長女は怒り、取っ組み合いのけんかになりました。間に入った三女が二人をなだめ、長女は赤のマフラー、次女は黄色のマフラーと交換することでようやく話は落ち着きました。
これで長女は赤いマフラーをするかと思えば、いやいやこのマフラーはカシミアの上等品だからよそいきにしようと再びしまいこみました。次女は晴れて黄色のマフラーを自分のモノにしましたが、赤にも未練があるし、悔しい。そこで、また自分で同じような赤いマフラーを買いました。
それでは三女の緑のマフラーはどうなったでしょう。
緑のマフラーをもらった友人は悩んでいます。折角もらったけれど、私はこの色が好きではない。この色を巻くと肌の色がくすんで見えるから。それに手持ちの洋服にも合わない。そこで、緑の好きな弟に譲ることにしました。けれど弟は忘年会で酔いつぶれ、マフラーをどこかに置き忘れて来てしまいました。
ああ、もったいない。
長女は何でももったいないとしまい込むしわい屋ですね。次女はもっともっとと欲しがる欲張りです。三女は同じようなものがあるからと、マフラーを失くした友人にプレゼントするやさしい心の持ち主です。プレゼントが友人の好みに合えばよかったのですが、残念ながら合わなかったのです。
もったいないとはいったいどういうことでしょう。「モノを活かすこと」という前提で見ると、友人のとった行動が一番近いでしょうか。三女は欲張りでもなく、友人のことを考える善意の人ですが、相手がそれを望んでいないということがわからなかったのです。皮肉な話ですが、こういうことはしばしば起こります。
もったいないという言葉を使うときに、活かす選択を考えてください。