双子姉妹の数奇な運命

日 時 平成30年9月13日(木)14時〜15時30分
 関西文化に育まれた文学として、今回は川端康成の「古都」を
紹介していただきました。
 彼は明治32年6月14日に大阪の医者の家に生まれますが、
幼くして両親を亡くし、祖父に育てられます。
 しかしその祖父も彼が16才の時に他界し、孤児となって母の
実家に引き取られて成人いたしました。
 さてこの「古都」という作品ですが、呉服屋の一人娘として育っ
た捨て子の娘(千重子)が、北山杉の村で偶然村娘(苗子)と出会います。
 二人は自分達が双子の姉妹であるということが解りますが、同じ屋根の下で暮すことはなく、物語は古都・京都の四季折々の美しい風景や伝統あるお祭り等を背景に切なく展開します。
 また西陣織の帯職人(秀男)や問屋の長男(竜助)も登場しますが、恋愛に進展することも劇的な展開もなく、円環的時間に依拠した1年が過ぎて行くのみです。
 彼はこの作品を書き終えた後、この小説がどんな風に出来上がっているのか私には解らない、北山杉を紹介したことにとどまっているかもしれない・・・と言っています。
 彼は日本人として初のノーベル文学賞を受賞した人ですが、その評価は西洋から観察していた日本の文化や情緒がよく解り、美学的要素が感じられるからだそうです。
 したがって評価の作品は、「伊豆の踊子」や「雪国」ではなく「千羽鶴」や「古都」であったようです。