1か月分のトイレットペーパー 10月12 日

くもり空の蒸し暑い大阪です。金木犀が咲き始め、香りを放っています。

今日は老前整理のナッジ紹介。

「これは何でしょう?」

私は講演のなかで、PWPの写真とこの質問をします。

突然、訳の分からないものを見せられて、戸惑ったり、わからない人も多いのです。

会場の方から正解が出たら、皆さん、なーんだという感じです。

次に「お宅は1カ月にトイレットペーパーを何ロール使うかご存じですか」

この質問をあちこちの講演会で1000人を超える方にしてきました。
その中で、ご存じだったのはたった3人です。

 私もこの結果に驚きました。

 先日書いた「使いたいときにものを探す」のも、ものが多すぎることに加えて、管理の問題があります。

膨大な「もの」のリストをすべて自分の頭の中にいれて、管理をしようとするのは無理があります。

 管理の第一歩は、「日常生活で何がどれだけ必要か」をチェックすることです。

これがわからないと、スーパーで安かったからと、食糧品などを買い込んで眠らせておき、気が付けば期限切れで廃棄処分にしたという経験はありませんか。

 この管理を考えるきっかけと、長年気になっていた問題を解決する一石二鳥ではないかと思いました。

 もう1つの問題とは、在宅のケアマネージャーをしていた時に目にした廊下に山積みのトイレットペーパーです。どうしてこんなことが起こるのでしょう。

 これはなくなったら困るという過去の不安がそうさせるのだと思います。
1973(昭和48)年に、オイルショックをきっかけとして物資不足が懸念されたことに過剰に反応した多くの人たちが、日本各地でトイレットペーパーの買い占めに走りました。

 この「トイレットペーパーがなくなる」という騒動を経験した世代は、なくなる不安があるため、常に多めに買っておかねばと思うようです。

 それに高齢者は体調の優れない日もあります。夏の暑い日は熱中症、寒い日、雪の日は転ぶ危険など、買い物に行くのもままなりません。だからこそ、安い時に多めに買って蓄えておこうとするのです。

 このような高齢者の心情は理解できるのですが、1カ月にどれくらいのトイレットペーパーが必要かを考えれば、何十年使っても使いきれないほどのトイレットペーパーを買い込む事態にはならなかったでしょう。

 (この場合は認知症の疑いも指摘されるかもしれませんが、それでも多すぎます)

私がこのようにトイレットペーパーの数を尋ねるようになったかといえば、東日本大震災がきっかけです。

 大阪在住ですので、1995(平成7)年の阪神大震災で地震がどれだけの猛威をふるうか、恐ろしさを身をもって知りました。その時の恐ろしさがよみがえり、災害に備えることの大切さを改めて考えました。

そこで必要なものをリストアップするうちに、トイレットペーパーのことを考えました。調べてみると経済産業省が、次のような告知でトイレットペーパーの備蓄をよびかけていることがわかりました。

・ご家庭でトイレットペーパーの備蓄が必要な3つの理由

1、阪神・淡路大震災において、被災者が最も困ったのは食料でも衣服でもなくトイレ不足。※1

2、東日本大震災では、被災地のみならず全国的にトイレットペッパー不足が発生。
※2

3、トイレットペーパーの約40%は静岡県で生産→東海地震等が起こると深刻な救急不足になる。※3

 ※1「帰宅行動シュミレーション結果等に基づくトイレ供給等に関する試算について」平成20年10月内閣府

 ※2「東日本大震災におけるガソリン・物流の課題」関谷直也(東洋大学社会学部)

 ※3「トイレットペーパー供給継続計画」平成24年11月 日本家庭紙工業会

 備蓄に関して、経済産業省では日常用のトイレットペーパーとは別に、1か月分余分にトイレットペーパーを備蓄することをすすめています。

 この資料を前にして私は考えました。

 まずトイレットペーパーはどこの家庭にもある必需品で、数を数えやすいこと。備蓄チェックの手始めには最適ではないかと思いました。

 ところが1カ月分のトイレットペーパーの使用量は各家庭により違います。

水なら一人1日3リットルが目安とされています。ところがトイレットペーパーはそう簡単に計算ができないのです。

 まず、家族の人数、男女、大小便の回数にそれぞれ差がある。家にいる時間の違い。また紙自体の問題もあります。

 市販の家庭用はシングルとダブルにより一巻きのメーター数が違う。家庭用のシングルでは60メートルが多いのですが、業務用などでは100〜200メートルくらいの芯なしの長巻というのを使っています。

 最近家庭でもこのような芯なしの100メートルくらいの長巻が増えているようです。そうするとますます複雑です。一概に1カ月何ロールと想定できないのです。(と私は思いました)

だからこそ、一カ月の使用量はどれくらいか知りたいと思い、講演のたびにお尋ねしたのですが、数を把握しておられたのは1000人余りでやっと3人です。

 ではどのようにしてトイレットペーパーを買っておられますかと尋ねると「安売りの時にまとめ買い」断然これが多いのです。

そこでまずここからだなと思いました。

手始めに1週間のトイレットペーパーの使用量を調べてもらうこと。これを4倍にすればおおよその見当がつきます。

 こうして1ヶ月におよそどれくらいのトイレットペーパーを使用するかがわかれば、必要な備蓄の量も決まります。備蓄品は多すぎても無駄になるし、足りなければいざという時に困ります。

 備蓄に関してこれで終わったわけではありません。ここがスタート地点です。

 緊急時の持ち出し品を用意されている方も多いと思いますが、今一度、水や食料などの消費期限の確認をしてみませんか。

ついこの間買ったばかりだと思っていたのに、1年以上たっていたということはよくあります。懐中電灯の電池のチェックも必要ですね。できればここに現在飲んでいる薬も入れておいてください。

 急に避難勧告が出た時に、薬は忘れがちですが、これは命に関わる場合もあります。期限が切れないようにチェックしながら最低5日分の薬を入れておくと安心かもしれません。

 災害の備えが終われば、次の段階で、日常生活に必要なものも1カ月にどれくらい必要か、調べてみることです。こうして管理をして、わかりやすく取り出しやすいように納めておくことです。

 次に食品庫の乾物や保存食品の消費期限を確かめてみてください。どこにでもありそうな缶詰や素麺など期限が切れていませんか。

Sさんのお宅では押し入れの奥から消費期限が8年以上前のカニの缶詰が3つも出てきました。いくらなんでもこれは食べられませんし、それこそもったいないですね。

 しまいこんでしまうとどうしても忘れてしまいます。定期的にチェックをして、消費期限が近ければ目につくところに出しておいて使いましょう。

講演でこのようにトイレットペーパーの話をしております。
ところで、お宅では1か月にトイレットペーパーを何ロール使っているかご存知ですか?