2014年12月3日に東京新聞の「坂岡洋子の1,2の老前整理」に書いたコラムです。
拙著『転ばぬ先の老前整理』(東京新聞)にも掲載しました。
今、読み返すと、この話も「ひとり暮らしとコミュニケーション」についてでした。
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46個の梅酒の瓶
先日、80代のひとり暮らしの女性Tさんから相談を受けました。
毎年漬けた梅酒の瓶に台所が占領されてどうすればよいのかわからないというのです。
驚いて「一体いくつあるのですか」と尋ねると、4リットルの瓶が26だそうですが、捨てるのはしのびないし、重いので最近は動かすのもつらいとのことでした。
まず疑問がわくのが、なぜそんなに大量の梅酒があるのかです。よほど好きなのか、買い込んだのか、売ろうと思ったのか。重ねてお訊ねすると、漬け始めたのは結婚してすぐで、十二年前に亡くなったご主人が毎晩飲んでおられたそうです。
亡くなってからも夫が好きだったということで何となく続けていたらこうなってしまったとのこと。
Tさんはお酒に弱いそうでまったく飲まず、遠方で暮らす子供たちも見向きもしない。
それならやめればよさそうなものですが、庭に梅の木が数本あり、たくさん実がなるからもったいないということでした。
四六個の梅酒の瓶と聞くと「なぜ?」と思うのですが、ご主人のへの思いと庭の梅の木の話を聞くと、なるほどと思います。
このように他人から見れば「なぜ?」と思うこともよく聞いてみると、それなりの理由があるのがわかります。
ここでまず今ある梅酒をどうするのかという問題です。地域の自治会の会長さんに相談して、欲しい方にお配りすることにしました。梅の実も婦人会に提供して公民館の料理教室でジャムにしてもらうことになりました。
Tさんは梅酒の瓶に囲まれて、何年も悩んでいたそうですが、今回のことで地域の方との交流も増え、ジャム作りにも参加するそうです。「こんなことならもっと早く会長さんに相談すればよかった」というTさんの言葉は、他の悩んでいる人にも当てはまるかもしれません。
ひとりで悩まずに地域の信頼できる人に相談してみると解決できることもあるかもしれませんね。
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