思春期の子供たちの心

日 時 2019年7月11日(木)14時〜15時30分
 5千円札に描かれている女流作家・樋口一葉の代表作「たけく
らべ」についてお話しを拝聴してきました。
 彼女は1872年(明治5年)生まれで、和歌を中島歌子に、小説
を半井桃水に師事して文壇デビューをしましたが、当時の不治の
病・肺結核に冒されて、わずか24才6カ月という短い人生を終え
た作家です。
 彼女が作家になった動機は生活苦からの脱出でしたが、わずか
1年半で「たけくらべ」の他、「にごりえ」や「十三夜」等々の小説を次々と発表し、一般の読者の他、文壇からも高い評価を得ました。
 今回解説いただいた「たけくらべ」は、「伊勢物語」第二十三段「筒井筒」をベースに、お祭りを舞台にした住職の息子・信如と遊郭吉原の遊女を姉にもつ少女・美登利の淡い恋を中心に、思春期の子供たちの心の葛藤を描いた作品です。
 この作品は森鷗外や幸田露伴など、文壇の人々からも絶賛され、前途有望でしたが24才という若さでこの世を去り、没後発表された「一葉日記」も高く評価されたこともあって、その後たとえば泉鏡花が「一葉の墓」を執筆するなどいたしました。
 この「たけくらべ」は宝塚でもミュージカル化されましたが、演出としまして「にごりえ」のお力を美登利の姉とするなど、独特の工夫ををして汀夏子や麻美れい等の出演で上演された由でした。