長生きだけど貧乏? 国連機関が公表する「人間開発指数」が示す日本の課題

UNDPは2020年12月15日、人間開発報告書を公表しました。この報告書では、毎年、人間開発指数のランキングを公表しています。人間開発指数とは、平均寿命や就学期間、所得など、人間が高度で豊かな生活を送るために必要な要素がどれだけ満たされているのかを指数化したものです。

 日本は19位で、最上位グループではありませんが、それなりの位置となっています。一方で、詳細項目をチェックすると日本が直面している課題も見えてきます。

 日本の評価項目が高いのはやはり寿命です。日本は世界でもトップクラスの長寿国ですから、長生きできるという点でランクを引き上げています。しかし長寿命であるにもかかわらず、トップクラスのランキングに入らない理由は賃金です。日本は先進国の中では1人あたりの所得がかなり低い部類に入りますから、この調査でも賃金に関する項目が大きく足を引っ張っています。

 今後の課題となりそうなのが就学機会です。現代社会はIT化やグローバル化が進んでおり、従来の教育システムでは不十分であるというのが一致した見方となっています。つまり、これからの時代においては、大学教育は限りなく基礎教育に近い位置付けとなるわけです。こうした状況から、各国は誰もが大学で学べるよう支援制度の拡充を進めています。日本でも大学の無償化などが始まりましたが、予算不足などからあまり順調に進んでいるとはいえません。今の子どもが将来、期待できる就学の機会という項目では、日本は上位国と比較すると数値が低くなっており、この部分もランキングに影響しています。

 日本は資源も食料もなく、人材だけが国を成り立たせる唯一の資源です。もしこのまま人材への投資抑制を続けた場合、日本の競争力は確実に低下し、結果的にはさらに豊かさが犠牲になる可能性が高いと考えられます。このランキングは、日本にとっての最重要課題は賃金と教育であることを如実に示しているといえるでしょう。
(The Capital Tribune Japan)
https://www.jp.undp.org/content/tokyo/ja/home/library/human_development/
hdr2020.html