「つつましく でも楽しく暮らしたい」 <定年後の生活をもっと楽しく>

(写真は原川両岸の桜並木・猪名川町上野)—–>
2012年4月24日
「つつましく でも楽しく暮らしたい」
<定年後の生活をもっと楽しく>

 今年の春は桜と山菜採りで思う存分楽しんだ。我が家からクルマでほんの15分も走れば猪名川町の田園風景が広がる。4月上旬、カミさんと下阿古谷地区へ出かけた。道路沿いの直売所に立ち寄り、新鮮な野菜を買った。お店のオバさんの勧めで、すぐ横の阿古谷川の堤を歩いた。

 そこにはヨモギやノカンゾウ、ノビル、ツクシがあるわアルワ。川の中にもクレソンが生えている。ヨモギを摘んで草餅を作ろうという話になり、先ずは、川の土手や田んぼの畦に生えているヨモギを摘み始めた。遠くの雑木林からはウグイスの鳴き声が聞こえてくる。長閑な里山や田んぼの風景を眺めていると、私に絵心があったなら、とふと思う。

 山菜採りを堪能した後は、県道68号線・原の交差点を南下。すると、原川に沿った道路の両側に見事なソメイヨシノの桜並木が続く。平日のお昼前とあって車の通行量も少なく、安全を確認しながら道路の中ほど近くで桜並木の写真と撮った。さらにクルマを走らせると、清和台の中心部を貫く幹線道路の両側にも、これまた極上の桜並木が続く。その後、一本立ちの枝垂れ桜を見たくて高原寺へ向かった。

 家に戻ってくると、カミサンは、採ってきたヨモギを使って草餅をつくり始めた。その途中、携帯電話を取り出して、娘と孫たちを誘っている。餅つき機からは湯気とともに、ヨモギ独特の香りが漂ってくる。やがて、草餅がつき上がり、孫たちはその中にアンコを詰める。カミさんは、孫たちが草餅を頬張る様子を嬉しそうに見ていた。

 その日の午後は、水明台1丁目の猪名川沿いにある森へ行った。そこには80本ほどのエドヒガンが群生する。約4年前、市有地の管理を任された人たちが「渓(たに)のサクラを守る会」をつくり、森の整備作業を続けている。今年もその森が一般に開放された。

 森の中の東屋で休んでいると、同会の方からお茶とお菓子をいただいた。整備作業の苦労話を聞きながら、鬱蒼と茂っていた雑木林の様子を思い浮かべていた。傍に木の切り株があったので、持ち帰って庭の腰掛けにしたいとお願いすると、快く承諾していただいた。

 ところで、年金生活の身となると、現役時代に比べて生活費は少なくなった。しかし、お金と時間をかけずとも、我が家の近くでも春を存分楽しむことができた。これからも、慎ましい暮らしは続くが、たまには少しばかりの贅沢も楽しんでみたい。そこで、定年退職した人たちが上手にやり繰りしながら、楽しく暮らしている例を次に紹介させていただきたい。

(阿古谷川の黒末橋から眺めた田園風景・猪名川町下阿古谷)

『<あなたも参加 asPara会議> リタイア後の生活費は』
◆「楽しめる節約術」がカギ
2010年11月23日付け朝日新聞より引用

 リタイア後、毎月どれくらい生活費をかけているのか、アスパラクラブの全国アンケートで尋ねると、「21万〜30万円」、「10万〜20万円」と答えた人が多く、現役時代と比べると、生活費は「少ない」と答えた人が目立ちました。とはいっても、楽しく暮らしたいですね。上手にやりくりし、お金が少なくても楽しく暮らせるコツを聞いてみました。

 アンケートでは嗜好品や趣味を見直し、節約する人が目立ちました。しかし、そう簡単にできるものでもありません。「なるほど」と思ったケースを紹介します。

 ヘビースモーカーだった東京都の男性(61)は、タバコ代として月に約2万5千円使っていました。還暦を契機に、孫と指切りをして「タバコをやめる」と宣言。それまで何度か禁煙に失敗してきましたが、やはり可愛い孫との約束は絶大でした。

 ついに禁煙に成功し、浮いたタバコ代は1年間で30万円ほど。月の生活費は、「21万〜30万円」なので、1ヵ月分の生活費にあたります。「タバコをやめたお祝いに、そのお金で妻と一緒に台湾へ旅行に行きました。節約した分で旅行や外食を楽しんでいます」。

 三重県の男性(62)はクラシック音楽を鑑賞するのが大好きです。しかし、リタイア後は、月の生活費を「10万〜20万円」に抑えているので、高額な演奏家のコンサートにはなかなか行けなくなった代わりに、若手演奏家のコンサートに出かけています。昼間なら、料金は千円のものもあり、かなりお得です。

 それだけではありません。駆け出しとはいえ、それなりの魅力がありますし、若手は小さなホールを使うので、客席との一体感を一層感じられます。また、若手の成長ぶりが何よりも楽しみになりました。

 趣味に専念することが結局、節約に結びつくケースもあります。奈良県の男性(66)は2年ほど前から、近所で使われなくなった畑を借り、家庭菜園にいそしんでいます。タマネギやナス、キュウリ、トマト、ジャガイモ、サツマイモなどを栽培してきました。

 特に今年は猛暑で、野菜の値段が高騰したので、食費は助かりました。しかし、それ以上の利点があります。「家庭菜園はレジャーのようなものなので、つまらない遊びに無駄遣いしなくなります。この点は大きいと思います」。

(写真は高原寺境内の枝垂れ桜・川西市赤松字北谷)

 コツコツと節約すること自体を楽しんでしまおう、というケースもありました。愛知県の男性(64)が夫婦で使う生活費は月に「21万〜30万円」。リタイア後は外食の機会を減らしていますが、その分、飲食業界の株主優待券を活用して補っています。

 「息子が帰省した時も、株主優待券でおすしをごちそうしました」。映画を楽しんだり、買い物をしたりする際は、金券ショップを活用し、安くついた分の小銭を小さな箱の中に入れておく。小銭がたまれば、値段が高めのケーキを買ってくるなどして気分転換をしています」。

 さらに、500円玉貯金もしています。一日が終わって財布の中に500円玉が残っていれば、ためていく。この前、500円玉貯金を数えてみると、10万円ほどたまっていました。「継続は力なり。妻に言わせると、みみっちいそうですが、自分にとっては遊び感覚ですね」。

 茨城県の男性(62)はパソコンを駆使し、電気代やガス代、水道代を年間を通してグラフ化しています。以前、体重を減らすのに日々の体重の変化をグラフ化したところ、減量に成功しました。「それならば、体重と同じように電気、ガス代なども『減量』できるのではないか」。

 夫婦二人暮らしで、月に「10万〜20万円」の生活費がかかりますが、風呂は間をおくことなく入ることで沸かし直しをセーブするなど、光熱費の節約に知恵を絞っています。グラフ作りをしていると、変化が一目で分かるので面白く、「もっと頑張ってみよう」という動機付けになるそうです。

 リタイアした後、つつましい生活ばかりに偏りすぎ、気持ちまで縮こまってしまってはいけません。いずれの人たちも生活費を抑えながら、その中で自分なりの楽しさや面白さを見いだしていました。これが大事なようです。(村瀬成幸)